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東海最前線

社員の改善提案活動による「日本一の知恵工場」(株式会社タニサケ:岐阜県池田町)

【ここが最前線】
・創業以来、毎年黒字の高収益企業
・社員の改善提案活動により「日本一の知恵工場」と呼ばれている
・社員が気持ちよく働くための職場風土をつくる工夫

岐阜県池田町に本社のある株式会社タニサケは、日本で初めて玉ねぎを誘引剤としたゴキブリの毒餌殺虫剤を開発した会社です。さらにネズミやムカデ、ナメクジなど、害虫や有害生物の駆除剤等を次々に開発。業界では競合他社がひしめく中、堅実な経営をされています。また、令和4年には「人を大切にする経営学会」が主催する「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で「審査委員会特別賞」を受賞しました。

今回は社長の清水勝己(しみず かつみ)さんに、タニサケの特色ある会社づくりの取り組みについてうかがいました。


株式会社タニサケ 代表取締役社長 清水 勝己さん

同業他社にひけをとらない実績と信頼

タニサケの本社は、濃尾平野の西北部にそびえる標高約924mの池田山の麓にあります。桜の名所として名高い霞間ヶ渓(かまがたに)や名湯・池田温泉にも近い、のどかで自然豊かな場所です。

タニサケ本社

同社が製造販売している主力商品は、タマネギを誘引剤として使った「ゴキブリキャップ」とピーナッツを使ったより即効性のある「ゴキブリキャップP1(ピーワン)」。天然成分に由来する柑橘系の香りが爽やかな「虫よけアロマミスト ナチュラルハーブバリア」、部屋に置くだけでムカデの侵入を防ぐ「置くだけムカデンジャー」など、害虫や有害生物の駆除剤や忌避剤は11種類。商品はすべて池田町の本社工場で作られ、全国のホームセンターやドラッグストア、公式オンラインショップ、大手ネットショップなどでも販売されています。東京と大阪にはそれぞれ支店があり、都市部での営業拠点になっています。

タニサケの商品は競合する同業他社の商品に比べ比較的高額ですが、1985年の創業以来毎年黒字を積み重ね、自己資本比率97%という優良企業になりました。

社員数はわずか39名。うち7名は「さわやかさん」と呼ばれるパート社員です。東京と大阪の支店に配属されている営業マンは合計で6人。目立つ広告もほとんど打っていません。

タニサケはいかにして盤石な経営基盤をつくりあげることができたのか。清水さんに、まずは創業時のいきさつから教えていただきました。

タニサケで販売されている商品。
主力はタマネギを誘引剤に使った「ゴキブリキャップ」で、
ピーナッツを使った商品も製造・販売されている。

 

社会貢献から生まれた日本初のゴキブリ誘引殺虫剤「ゴキブリキャップ」

タニサケの創業は1985年。創業者はゴキブリキャップの開発者である故:谷酒茂雄(たにさけ しげお)さんと、現在は相談役を務める松岡浩(まつおか ひろし)さんです。

清水さん「当時、松岡相談役はスーパーマーケットを経営されていました。ところがゴキブリがよく出るので困っておられたのです。そんな時、ゴキブリによく効くというゴキブリだんごがあることを知り、スーパーに置いたところ、ゴキブリが出なくなったそうです。このゴキブリだんごを発明されたのが、垂井町に住んでおられた谷酒さんでした」

谷酒さんには驚きのエピソードがあります。徳島県の出身で、長年サッシメーカーで経理の仕事をされていたそうですが、仕事のかたわら、ゴキブリ嫌いの奥様のために、ゴキブリを駆除する研究を開始しました。

清水さん「自宅では5000匹のゴキブリを飼育していたという話も残っており、ゴキブリ博士と呼ばれていたそうです」

当時、ホウ酸がゴキブリに効くことは知られていたそうですが、どうやってそれをゴキブリに食べさせたらよいか、まだわかっていませんでした。実験の結果、谷酒さんはゴキブリがタマネギを好むことを発見。タマネギとホウ酸を混ぜたゴキブリだんごを食べさせればゴキブリは脱水症状を起こし、水を求めて屋外に出るので家の中でほとんど死骸を見ることもなく、ゴキブリを駆除できることをつきとめました。

谷酒さんと松岡さんの二人は、趣味や社会活動などを目的として設立された女性団体である婦人会などに、ゴキブリだんごの作り方を教えて回ったのでした。ゴキブリだんごのすぐれた効果はこうして全国に広まっていったのです。

清水さん「やがて、『作るのは面倒だから商品化してもらえないか』という声があがり、『谷酒生物公害研究所』を設立。ゴキブリだんごは商品化され、『ゴキブリキャップ』が誕生しました」

ゴキブリだんごを発明した谷酒さんは、1988年に亡くなりました。タニサケの社名は谷酒さんにちなんで名付けられたのです。

 

創業者で現在、相談役の松岡浩さん(写真:タニサケ提供)

 

高額でもゴキブリキャップが売れる理由とは

ゴキブリキャップの価格は大手メーカーの類似品と比べ、2倍から5倍。それなのに安定した販売数を誇っているのはどうしてでしょうか。

清水さん「やはりそれだけ効き目があるからでしょうね。『ゴキブリキャップのおかげで20年以上、家でゴキブリを見ていない』など、お客様のお声が毎年弊社に届いております」

ゴキブリキャップの成分は、発売当初から100%天然由来で化学合成、農薬成分は使用されていません。子どもやペットの誤食などを防ぐため、頑丈なケースで覆われているなど、安全面でも配慮されています。

ゴキブリキャップの製法は少しずつ改良が加えられています。タマネギ以外にピーナッツを好むこともわかり、しかもタマネギよりも効き目が早いとあって、現在ではピーナッツを使った「ゴキブリキャップP1」という商品も販売されています。

2023年にはゴキブリキャップを屋外にも置けるようにするための専用ケースが発売されました。ケースは繰り返し利用でき、これによってゴキブリが屋内に侵入するのを防ぐことができます。また、雨水により、キャップ内のホウ酸団子が溶け出さないように工夫されています。

清水さん「ゴキブリキャップは販売当初から、『外に置けないか』という問い合わせがあり、それを実現した形となりました。これまでゴキブリキャップを使われたことのないお客様にもその効き目を理解していただき、今後使っていただくきっかけになればうれしいです」


ゴキブリキャップは自社工場で製造されている(写真:タニサケ提供)


目視による検査も行われている

 

社員の改善提案活動による「日本一の知恵工場」

タニサケには創業間もない頃から続けられている社内活動があります。それは「改善提案活動」。これこそがタニサケを優良企業たらしめている大きな理由の一つなのです。

清水さん「日々の業務の中でもっとこうした方が良いと気づいたことを、改善提案書に書いて提出します。毎月100件ほどの提案が提出され、部門ごとに審査された後、改善提案委員会で二次審査が行われます。採用されるのは全体の6〜7割。社員のモチベーションがアップするように、採用基準はゆるめに設定しています。提案1件につき100円、採用されれば1件につき1,000円~10,000円の報奨金が出ます。小さなことでも自分の提案が採用されればうれしいですよね。その感動と自信が原動力となってタニサケを支えています」

改善提案書 『フレッシュタニサケ』№409より転載

実際に改善提案が利益向上に役立った例はあるのでしょうか。

清水さん「いっぱいあります。例えばゴキブリキャップのキャップが外れているという不良品を見つけるためにセンサーを導入してはどうかという話がありました。しかし、センサーをつけると費用が600万円ぐらいかかります。そこで社員から、『製造ラインにキャップをひっかけるレールを敷いてはどうか』という提案が出されました。キャップがかぶっていない製品はレールにひっかからず、ラインから下に落ちます。提案によるわずかな投資で、不良品が出なくなりました」

ベルトコンベアで運ばれてくるゴキブリキャップ。
キャップがはまっていないとラインから落ちる(写真:タニサケ提供)

ほかにも提案によって業務が改善された例は数知れず。もちろん、採用された提案は必ず実行するという会社側との信頼関係の上に成り立っているものであることは、いうまでもありません。こうしてタニサケの工場は「日本一の知恵工場」と言われるまでになったのです。

利益よりも働く人々の幸せを優先

会社は社員が一日のうちの大部分を過ごす場所。だからこそ風通しがよく、社員にとっても快適であることが求められます。社風や職場の状態が改善されれば、そこで働く社員たちの士気も上がり、それが好循環となって生産性も上がり、売り上げのアップにつながります。タニサケでは改善活動のほかにも職場を気持ちの良い場所にするため、いろいろな工夫がなされています。

清水さん「社風委員という人たちがいて、月に一度、自分たちでメニューを決めて昼食をつくり、昼休みにみんなが一緒に食堂で食べます。また、人への感謝を表す『ありがとう』という言葉は口にするのが照れくさかったり、言うのを忘れてしまうこともありますよね。そんな時、気持ちを相手に伝える『ありがとうカード』というものがあって、このカードを書いた人ももらった人も1件につき、100円がもらえます(上限は1,000円)。誕生日には会社から2,000円程度のケーキや商品券が出ますし、4月の親孝行月間には会社から社員1人ひとりに親孝行に使うようにと1万円が支給されます。5月は家族感謝月間で、この月も1万円がもらえます」

タニサケでは毎月、社内報委員会により、『フレッシュタニサケ』という8ページの社内報が発行されており、10月号で409号となりました。カラー刷りの冊子で、内容もさまざまですが、社長日記や松岡相談役、社員さんのひとくちコラムはとても味わい深いものがあります。同紙は毎月2,000部ほど印刷され、社内だけでなく取り引き先などにも送付されており、希望者には有料で送付されています。

社内報『フレッシュタニサケ』

また月に一度、社員で道路や公園、神社などの掃除を行っています。これは創業の地に感謝を表してのことだそう。

清水さん「最初は報奨金目当てで改善活動をしていても、そのうちに活動そのものに喜びを覚え、やらされているのではなく、自ら進んで実践するようになる。それが改善活動の大きな意義になります。自分の周りの環境を積極的に良くしようとすることで、向上心とこれまでにない創意工夫が生まれます。もちろんそんな社風が生まれるまでには年月と忍耐、努力が必要でした。」

従業員わずか39名という小さな会社が生み出した「日本一の知恵工場」は、今後も創業者である松岡さんの思いを引き継ぎながら、清水社長の下、いっそうの飛躍を遂げることでしょう。

【会社概要】
会社名:株式会社タニサケ
代表者:代表取締役社長:清水勝己
創業:1988年
所在地:
・本社 〒503-2428 岐阜県揖斐郡池田町片山2957-1
・東京支店 〒101-0024 東京都千代田区神田和泉町1-3-17 誠心ビル5階
・大阪支店 〒532-0011 大阪市淀川区西中島5-6-13 新大阪御幸ビル5階
資本金:1億円
事業内容:防除用医薬部外品製造販売 農薬製造販売 他
連絡先: TEL(0585) 45-8555
URL:https://www.tanisake.co.jp/

 

【取材・文】
松島 頼子
岐阜県出身。岐阜県を拠点に約20年、地域の活性化から企業家インタビューまでライターとして幅広く活動。実家はお寺。地域の歴史や文化、伝説などを深掘りすることで、まちの活性化や地域を見直すことにつなげたい。
「里山企画菜の花舎」 代表
里山企画菜の花舎