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東海最前線

時代のニーズに合った高機能・高品質のタオル製造を100年以上継続(おぼろタオル株式會社 三重県津市)

【ここが最前線】自社一貫生産体制でのものづくりをモットーに、高い品質を守りながら時代のニーズに柔軟に対応

おぼろタオル株式會社は明治41(1908)年の創業。100年以上の歴史を持つ老舗のタオル会社として三重県津市に拠点を置き、創業時から自社で一貫生産を行っています。

国内における繊維産業が斜陽となり、周囲のタオルメーカーが次々に廃業するなか、1世紀を越える長い歴史を生き抜いてこれたのはなぜか。数々のロングセラー商品を生み出し、創業以来こだわり続ける自社のモットーとは?

創業者の曽孫にあたる専務取締役の森田壮さんにうかがいました。

 

地元の消費者と「おぼろタオル」を結ぶ直営ショップ

「おぼろタオル」があるのは津市上浜町。近鉄名古屋線や旧伊勢別街道と呼ばれるかつての伊勢神宮への参宮道がそばを通り、主要幹線道路である国道23号も近くを走っています。

社屋の前には、「おぼろタオル」のショールーム兼直営ショップである「FAN’S SHOP OBORO」というロゴの入った白いコンテナハウスが設置され、中には「おぼろタオル」のオリジナル商品が並んでいます。

創業以来のロングセラー商品である「おぼろ染めタオル」や「おぼろガーゼタオル」をはじめ、「髪・顔・身体 専用タオルシリーズ」、従来製品よりもさらに吸水性に富む「おぼろ百年の極」、軽くて「素肌が微笑む/バスタオル・フェイスタオル」など、その数は40種類以上。

直営ショップは地元の消費者と「おぼろタオル」を結ぶ絆の役目も果たしています。

森田さん「直営ショップができるまで、地元の人は、弊社がどんなタオルを作っているのか、どこで販売しているかを知りませんでした。自社商品を自社の敷地内で販売することで、じかにタオルに触ってその良さを体感してもらえますし、知ってもらうことでより親近感や興味を持ち、リピーターになってくださる方が増えています。」

海外からの安い輸入タオルにシェアを奪われ、周囲のタオル製造会社が次々に廃業を余儀なくされるなか、「おぼろタオル」は、「おぼろ染め」という創業時から続く伝統技術を大切にし、技術革新を繰り返しながら他社では代替えのできない、ぶれない独自のものづくりを展開してきました。

現在の直営ショップは2代目。初代よりさらに店内は広く、商品数も増えた。
消費者の中には、以前オンラインストアで購入し、とても良かったので
直売所でじかに購入したいと県外から訪れるリピーターもいるとのこと。
営業日時:平日8:00∼17:00 土曜臨時営業日9:00∼15:00 ※詳細はHPで確認ください

 

新商品の素肌が微笑むシリーズ。肌ざわり、質感共にふわふわでとても心地良い。
(写真提供:おぼろタオル)

 

日本画家の美意識とセンスから生まれたおぼろ染め

「おぼろタオル」は1908(明治41)年、森田さんの曽祖父・森田庄三郎によって創業されました。当時日本ではまだ手拭いが主流で、タオルは一般に普及していませんでした。しかし、庄三郎は地元を盛り上げるために、タオルの製造・販売を思いついたのです。こうして津市を中心に、県内では中勢や北勢でタオルが盛んに生産されるようになりました。

ちなみに国産タオルの発祥地は大阪の泉佐野、2番目が今治、3番目が三重県だそうです。

庄三郎はお菓子屋に生まれましたが、京都で日本画の修業をして絵師となり、肖像画を描くことを生業(なりわい)としていました。そこで自分の特技を生かして、無地のタオルに模様を入れることを考えたのです。それが「おぼろ染め」が生まれるきっかけとなりました。

「おぼろ染め」とはタオルの緯糸(よこいと)のみ色を染める技法です。これによって乾いているときはおぼろげな図柄が、水に濡らすことではっきりと浮かび上がってきます。機能的なタオルに日本の伝統と粋な遊び心を加えた「おぼろ染め」のタオルは評判を呼び、全国に知れ渡るようになりました。こうして、商品の名前がそのまま企業名になったのです。

「おぼろ染め」は、日本画家であった庄三郎の発想とセンス、さらには自社工場での一貫生産体制がなければ成し得なかった技法でした。創業時に庄三郎が考案した「おぼろ染技法」は特許を取得しています。

タオルに織り込まれた図柄の染め型には、古くから隣りの鈴鹿市の白子・寺家・江島地区に根付いて発展してきた「伊勢型紙」も使われています。

日本画家でもあった創業者・森田庄三郎(写真提供:おぼろタオル)

創業以来根強い人気を誇るロングセラー商品・おぼろ染めタオル
(写真提供:おぼろタオル)

濡れたおぼろ染めタオル。織り込まれた図柄がはっきりと浮かび上がる。
(写真提供:おぼろタオル)

整経と呼ばれる織り前の工程。複数用意した経糸(たていと)と
パイル糸を回転させることで1本の糸にまとめ、ビームと呼ばれる筒に
円柱状に巻きつけていく(写真提供:おぼろタオル)

おぼろ染めの工程。おぼろ染めを用いて緯糸(よこいと)にのみ色をつけていく。
現在も創業時と変わらない工程で作られている。(写真提供:おぼろタオル)

 

日本初「二重袋織ガーゼタオル」の量産化に成功

1927(昭和2)年には、日本で初めて細糸による「二重袋折りガーゼタオル」の量産化に成功しました。これは片面がガーゼで片面がタオル地という二重構造になっており、吸水性や保湿性に優れた商品です。

このタオルが生まれた背景には、当時津市の花街で女性たちがおしろいを塗る際はガーゼを使い、お化粧を落とすときには濡らしたタオルを使っていたという実情がありました。仕事で花街にも縁のあった庄三郎は彼女たちの不便さを解消したいと考え、ガーゼタオルを考案しました。

森田さん「ガーゼとタオル地を貼り合わせるのは難しい事ではありませんが、機械で織る際に両方がずれないように、袋状にしたのです。より肌あたりが優しくなるように細糸を使用しました。」

ガーゼタオルは広く世の中に受け入れられ、現在も同社のロングセラー商品として根強い人気があります。

おぼろガーゼタオル(写真提供:おぼろタオル)

大正時代の工場風景(写真提供:おぼろタオル)

ガーゼタオルは肌触りがよく、吸水性や保湿性に優れていたため、
女性の腰巻(下着)や寝巻にも使われた(資料提供:おぼろタオル)

 

ニッチな分野でも消費者の心に深く刺さるものづくりをしたい

こうして順調に業績を伸ばしてきた「おぼろタオル」でしたが、1990年代のバブル崩壊を経て繊維産業は衰退。タオルも海外からの安い輸入品にシェアを奪われ、売り上げは激減。三重県内でもタオルを製造していた企業のほとんどが廃業しました。その中で、おぼろタオルが経営の危機を乗り越えることができたのはどうしてでしょうか。

森田さん「タオルメーカーの多くは大企業の下請け的な位置づけで、商社が海外からの商品を仕入れて安く販売するようになると太刀打ちできず、姿を消して行きました。うちは小さな会社ですが、創業時からオリジナルの技法を持ち、製造から販売まで自社で可能な体制をつくりあげていたことで、ニッチながらほかでは代替えできない高品質のタオルを作り続けることができました。そうしたうちのものづくりを愛してくださるファンの方々がいてくださったおかげです。」

「おぼろタオル」が生産するタオルは1日に約1万枚。これは今治などに比べると、とても少ない数なのだそう。しかし、コストを重視し、効率優先にシフトすれば、価格競争に巻き込まれてしまいます。

森田さん「私達は値段だけで選ばれるようなタオルづくりはしたくありません。おぼろタオルを使ってもらってまたリピートしたいと思えるような、価格以上の価値を感じていただけるような商品づくりをしていかないと、生き延びていくのは難しいと考えています。ターゲットを絞り込んで、ニッチな分野でも人の心に深く刺さるものづくりをしたいです。万人受けするよりも、私達の製品を長く愛して下さる方が、10人中1人いてくださればいいのです。」

 

コロナ禍を経て変化した消費者のニーズ

2019年末から新型コロナウイルス感染症が拡大し、人々は旅行や買い物など行動範囲の制限を余儀なくされました。そしてコロナは暮らし方にも大きな影響を与えたのです。

森田さん「昔はタオルといえばギフトの代表格。どこのご家庭でもいただき物のタオルがあったでしょうし、あえて購入する必要を感じなかったのではないでしょうか。ところがコロナによって家の中で過ごす時間が増え、足元の生活を見直したことで、もっとQOLを向上させたいと考えるようになりました。タオルについても自宅にあるから使うのではなく、もっと機能性がよくて、肌ざわりの良いタオルを自分のために買い求める人々が増えてきたのです。」

おぼろタオルでも従来の製品に加え、より機能的でニーズを明確にした新定番「専用タオルシリーズ」を開発。これは、髪・顔・体と、使う体の部位を特定したものです。

専顔タオル(写真提供:おぼろタオル)

専身タオル(写真提供:おぼろタオル)

専髪タオル(写真提供:おぼろタオル)

森田さん「たとえば顔専用にはよりソフトで繊細な糸を使い、水分を拭き取るときの顔あたりが優しく感じられる工夫をしていますし、髪専用は髪への負担が少なくなるよう、吸水スピードと吸水量にこだわり、体専用タオルは京都工芸大学との共同研究から生まれました。乾いた状態と濡れた状態では体感の柔らかさが変化し、赤ちゃんからお年寄りまで幅広い世代の方に使っていただけます。

また、選び抜いた繊細な細糸を丁寧に織り上げた「おぼろ百年の極(きわみ)シリーズ」は、思わず顔を埋めたくなるボリューム感と柔らかさが特徴です。

今後も「おぼろタオル」では身の丈に合ったものづくりをモットーに、品質をキープしながら時代のニーズに柔軟に対応することでファンを増やし、自社の製品を必要とする消費者に届けていきたいと考えています。」

(写真提供:おぼろタオル)

 

【会社概要】
会社名:おぼろタオル株式會社
代表者:加藤勘次
創業:1908年
所在地:三重県津市上浜町3-155
資本金:2500万円
事業内容:タオルの製造から販売まで
連絡先: TEL(059) 227-3281(代)
URL:https://www.oboro-towel.co.jp/


【取材・文】

松島 頼子
岐阜県出身。岐阜県を拠点に約20年、地域の活性化から企業家インタビューまでライターとして幅広く活動。実家はお寺。地域の歴史や文化、伝説などを深掘りすることで、まちの活性化や地域を見直すことにつなげたい。
「里山企画菜の花舎」 代表
里山企画菜の花舎