「庭のあるミニマムな暮らし」をコンセプトとするスモールハウス、「庭のある暮らし」を体験できる展示場「マテリバ」が2023年4月28日オープン(竹藤商店・愛知県小牧市)
2023.04.28
株式会社竹藤商店は、小牧市にある、造園資材を造園業者に販売している会社です。それだけでなく、社内に造園資料室を設け、造園に関するセミナー・講演会や、造園の施工技術に関する講習会などを開催し、造園家と建築家の交流の場を設けるなど、造園業の維持発展につなげる活動を行っています。2023年4月28日には、「庭のあるミニマムな暮らし」をコンセプトとするスモールハウスを2軒設置した、「庭のある暮らし」を体験する展示場「マテリバ」をオープンします(一般生活者向けオープンは6月以降を予定)。「マテリバ」と「庭のある暮らし」について、代表取締役社長の秦野 利基さんにお話を伺いました。
株式会社竹藤商店 代表取締役社長 秦野 利基さん
マテリバについて
(以下、秦野社長)まず、マテリバをご紹介します。
コロナ禍になり、庭やアウトドアへの関心が高まっています。この機会に、当社は「庭のある暮らし」について、実物を展示し、造園家と建築家と一般生活者が交流するプラットフォームをつくることを企画しました。
マテリバを企画したきっかけは、当社の社員が造園家の方々と交流する中で聞いたことです。昔は家を建てる時は、造園家と神主と大工が「敷地内のどこに家を建てて、どこに池をつくり、木を植えるか」と快適な住まいづくりのための相談をするのが当たり前でした。しかし、今の造園家の仕事は、タイルやフェンスなどの人工物を使ってエクステリアを作るだけになってしまっているという話を聞いたのです。私もこれを聞いて、このままではいけない、もっと庭の価値を高める必要があると思いました。造園家は、庭の自然を通して人を元気にしたり、リラックスしたり、人がいい人生を送れるような環境を手掛ける仕事です。私どもは、造園資材の卸売業として造園家を支える立場から、改めて「庭のある暮らし」の価値を発信していくべきだと思いました。それがマテリバを作る原点になりました。
「マテリバ」は、「マテリアル+場所」の造語です。造園資材のすべてが集まる場所で、卸売りという中間の立場を生かして、産地と造園家、そして建築家、庭や建物、暮らしをコーディネートする様々な人たちがつながることができる「プラットホームになってほしい」という思いを「マテリバ」という名前に込めました。
マテリバには、「庭をリビングにする」ことをコンセプトにしたスモールハウスを2軒設置しました。第1スモールハウスは、ガラス張りの2棟からなる40平米の家で、1LDKです。2つの棟の間はウッドデッキで繋がっており、これが「アウトドアリビング」となります。奥の庭には小さな滝による水の流れを設けました。
第1スモールハウス
第1スモールハウスのエントランス
第1スモールハウス 内部
第1スモールハウス バス・洗面台
第1スモールハウスの奥の庭にある滝・水の流れ
第2スモールハウスは、リビングの棟、キッチンの棟、シャワールーム&洗面所の3つの棟からなります。棟の間は石のテラスでつながっており、ここが「アウトドアリビング」になります。奥の庭には、小川をイメージした水の流れを設けました。
第2スモールハウス
第2スモールハウス 内部
第2スモールハウス 洗面所
小川をイメージした水の流れ
2つのスモールハウスの間には、芝生広場やフリースペースを設けました。ここで造園に関するワークショップやセミナー、マルシェなどを開催する予定です。
芝生広場
フリースペース
スモールハウスの周囲には、庭づくりの参考にしていただくために、敷石、植栽、塀・石垣をレイアウトして展示しています。
敷石 手前の黒っぽい石は「アルデシア・ネロ」
敷石 諏訪鉄平石
敷石 インド産御影石
ロマリアストーンの塀
近江石の石垣
植栽
通路沿いの植木 奥は資材置き場
マテリバに隣接する資材置き場には、2000トン以上のさまざまな造園資材をストックしています。関心がある方は、これらの造園資材も見学していただくことができます。
竹藤商店の資材置き場に置かれている石材
竹藤商店の資材置き場に置かれている石材
マテリバは、2023年4月28日に取引先向けにオープンします。一般の方向けのオープンは6月以降となります。ご来場いただいた方は、自由に見学していただき、ご質問やご相談があればスタッフが対応させていただきます。一般向けの講演会や講習会などのイベントは随時、ホームページやSNSなどでご案内する予定です。
当社はこれまで、資材の仕入れ先と造園業者、作庭家・建築家のプロの方と取引をしてきましたので、一般の方とはあまり接してきませんでした。マテリバを一般公開した後、どのような一般のお客様がどの程度いらっしゃるか、どのような相談が寄せられるかなど、見通せない部分があります。そのため、当面は「テストマーケティング」と位置付けています。
庭は眺めて終わりではなく、庭がある家で「どのような暮らしができるか」ということが大事です。その意味では、現状のマテリバはまだ庭のソフト面が足りないと思っています。今後はソフト面を充実させて、情報発信していきたいと考えています。
竹藤商店について
私は2008年に竹藤商店の4代目の社長に就任しました。私はこれまでずっと「庭の価値とは何か」ということを追求してきました。
竹藤商店は大正元年(1912年)に、天然の竹を扱う企業として創業しました。日本人はもともと自然の素材を使って、風土に合う暮らしをしていました。竹は土壁の下地に使われたり、竹垣や竹籠に使われたりして、一定の需要がありました。
竹屋から造園資材卸総合センターへ
しかし、戦後から高度成長期にかけて、新しい素材が急速に普及してきました。土壁はコンクリートに、竹籠や竹の器はプラスチックに置き換わり、竹の需要がすっかり減ってしまいました。そのため、竹林の手入れがされなくなり、放置される竹林も増えました。プラスチックの普及によってマイクロプラスチックの海洋汚染も起こっています。自然と風土に合った暮らしから遠ざかった私たちは、果たして進歩しているのだろうかと、考えてしまいます。
日本人の庭に対する価値観
日本は高度成長期に、「庭付き一戸建て」という言葉に代表されるように、庭付きの家を持つことが理想とされました。ニュータウンにも庭が設けられ、庭も含めて「生活の質を上げていこう」という風潮が高まりました。この時代には造園業界も発展し、竹藤商店も庭の材料がよく売れていました。
しかし、次第に日本人の経済環境や生活スタイルともに、庭に対する価値観が変わっていきました。「庭は手入れが大変」、「庭は無くてよい」と、庭が重視されなくなり、次第に庭の材料も売れなくなっていきました。
昨今、コロナ禍をきっかけに、再び庭の価値が見直されつつあります。庭やアウトドアへの関心が高まり、ホームセンターでもガーデニングやアウトドア商品の売上が増えています。
この機に、私は「自然と接して生きる幸せ」、「庭のある暮らし」という価値観を世の中に広めたいです。昔のように、庭師と建築業者が一緒に庭と家をつくる状態に戻り、庭の価値、庭と建物のあり方が見直されてほしいです。
マテリバの植栽
今まで当社は、主に造園・エクステリア事業者を対象に、造園に関するセミナーや施工技術を伝える講習を開催してきました。今後はさらに、造園家と建築家が一緒に庭造りをできるよう、造園家と建築家と施主が交流する機会を設け、造園、庭の文化をしっかり伝えていく必要があると考えています。
ドライストーンウォーリング講習
マテリバと他の展示施設との違い
住宅展示場でも、庭を備えている家は多数あります。しかし、それらはマテリバとは異なり、建物を中心とした展示施設です。
マテリバは、「庭のあるミニマムな暮らし」を提案する施設。「庭付きの家」ではなく、「家付きの庭」というコンセプトです。このようなコンセプトの施設は珍しいといえます。庭とスモールハウスを組み合わせ、庭をリビングにする発想こそ、私たちが目指すところ。マテリバを通して、「家を建てるなら庭も一体でつくろう」という考え方を広めていきます。
コロナ禍ではホームセンターのガーデニングやエクステリア関連商品の売上が増えました。マテリバとホームセンターとの大きな違いは、「マテリバは、庭づくりについて相談できる」ことです。マテリバでスタッフに庭についてのお考えを伝えていただければ、適した庭師や建築家を紹介できます。また、庭師や建築家と直接話していただけるイベントも開催する予定です。
土づくりの実習
竹藤商店
【会社概要】
会社名:株式会社 竹藤商店
所在地:愛知県小牧市小牧原新田1622番地
TEL:0568-77-2321(代) FAX: 0568-77-0117
E-mail:info@zouenshizaikan.jp
URL:https://www.zouenshizaikan.jp創業:大正元年
代表者:代表取締役 秦野 利基
業務内容:各種造園緑化資材の卸売り、緑化相談及びセミナーの開催、各種関連展示会への出店及び協力
【取材・執筆】
東海最前線 編集部