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東海最前線

仲卸の「目利き力」を活かし、仕入れ・青果店も手掛ける青果流通会社(カネ井青果)

ココが最前線:仲卸の枠を超えて生産者から直接仕入れ・小売店も手掛ける青果流通会社

岐阜駅で人気となっていた期間限定店の「駅ナカ八百屋」

JR岐阜駅は年々様変わりをしているが、
この2~3年での一番の発見は、1階に出現した駅ナカの八百屋。
駅のバリアフリー化工事が始まるまでの期間限定の店舗として、
2017年に約80平米の青果店が開店した。
開店と同時に、賑わいができた。多い時には1日に2500人以上を集客した。

私もその賑わいにつられ、岐阜駅を利用するときは、頻繁に立ち寄った。
その理由は、品ぞろえが豊富、安く、質が良い。
生産者である農家の顔が見え、商品への自信が感じられ、
スタッフの方が若々しく、元気いっぱいというのも気に入った。

この店はいったいどのようなお店だろう?
チェーン店か、農協のアンテナショップだろうか?
調べてみると、青果の仲卸の会社が運営しているお店のようだ。

2020年7月のある日、この店「カネ井青果 アスティ岐阜店」が
7月末に閉店するという店頭ポスターを見た。
期間限定なのでいつか閉店するとは思っていたが・・・

ポスターをよく見ると、なんと1週間後に、
同じJR岐阜駅に隣接する「アクティブG」内に開店するという。
今度は期間限定ではなく、常設売り場になるとのこと。

売り場で「引っ越すんですか?」と、声をかけたら、
その人が店舗を運営する会社の社長、藤井雅人さんご本人であった。

2020年8月7日にJR岐阜駅に隣接する商業施設「アクティブG」に、
新店舗「カネ井青果 アクティブG店」が開店した。
約100平米のお店で、「アスティ店」には無かったバックヤードも設けた。
藤井雅人社長にお話しをお聞きした。

 

創業50年の仲卸、農家からの直接仕入を始め、販売先も拡大

「カネ井青果 アクティブG店」を運営するカネ井青果は、
1971年創業で、今年創業50年を迎える。現在の藤井雅人社長は2代目。

創業当時は、まだスーパーマーケットの業態も誕生間もなく、
八百屋に青果を卸すのが仲卸の主な役割であったが、
その後、スーパーマーケットが発展し、食品流通が多様化しはじめた。

現社長の藤井雅人さんは、東京の大学を出て、
岐阜に戻り、家業のカネ井青果を手伝いはじめた。
2001年に社長に就任した。
藤井社長は食品流通が今後劇的に変わることを予感しながら、
さまざまなネットワークづくりを行ってきた。

仲卸業は、卸から製品(青果)を仕入れ、小売店に販売する仕事。
全国で仲卸企業は、現在約1400社。競争が激しい業界である。

常により良い製品を見極め、仕入れる力を持っていないと存在意義がない。
そこで、藤井社長は仲卸50年の歴史に育まれた野菜の目利き力を生かして、
確かな品質の野菜をつくる農家から直接仕入れるルートを確立した。

農家にとっても、生産物を直接買い取ってくれる相手がいることは心強い。
季節性の高い農作物を、地元以外も含め、通年で調達できるようにした。
生産者との信頼関係が、カネ井青果を成長させた一因ともいえる。

確かな品質の野菜を、適正な価格で仕入れることができれば、
小売店からの信頼も厚くなる。
「仕入れ力」を強化する地道な努力をしながら、
食品スーパーや生協などに取引を広げ、
拠点を岐阜から愛知、長野、静岡、東京にも広げていった。

取引先が増えるにつれ、カネ井青果は、パッケージを扱う会社や、
小売店以外の外食、給食、ネット販売に対応する会社など、
グループ会社を相次いで設立し、仲卸業の枠を越えて業容を拡大してきた。

 

企業価値を高めるため、「駅ナカ八百屋」を開店

卸や仲卸は食品流通の縁の下の力持ちの存在で、
その存在は一般には知られていない。

カネ井青果がJR岐阜駅のアスティに期間限定のお店を開店したのは2017年秋。
周囲からの誘いがきっかけだった。
藤井雅人社長は、この出店により会社の価値が高まると考えた。

お店が繁盛すると、「あのお店をやっている会社」と認知され、
会社の認知度が高まり、青果の卸業界を知らない若い人たちにも、
会社を知ってもらえるようになるのではないか。
そう考え、藤井社長自らが店長やスタッフの育成も含め、総指揮をとり、
岐阜駅の期間限定店舗「カネ井青果 アスティ岐阜店」が開店した。

開店後、お店は繁盛店となった。
すると、口コミで若い人が働きたいと多数応募してくるようになり、
バイトから社員になった学生もいるとのこと。
今では、元気な若いスタッフがお店を支えている。

カネ井青果店は、「アスティ岐阜店」の成功をもとに、次のように出店を続けた。
2018年12月 JR高蔵寺駅に期間限定店舗をオープン。
2019年4月 JR大垣駅に店舗をオープン。
2020年7月 豊橋駅ビルに店舗をオープン。
2020年8月 JR岐阜駅「アクティブG」に店舗をオープン。
この秋には名古屋の栄にも新店舗を開店させるという。

カネ井青果は、食品スーパーのような折込チラシはつくらない。
「うちには、チラシはいらない。
 毎日市場で仕入れてくるから予めチラシに載せる値段もわからない。
 店頭で商品を見て買ってもらえたらいい。」
と藤井社長は言う。

新鮮な野菜・フルーツと手書きの「本日の目玉商品」の手作りPOP。
これで充分迷うことなく、買い物が進む。
カラフルな野菜やフルーツが見事に並び、通行客を引き寄せる。
商品を目で見て、カゴ一杯買ってしまう、「カネ井青果マジック」がある。

 

 

食品仲卸業1400社のなかで、給与水準と福利厚生のナンバーワンを目指す

カネ井青果には、現在100名の正社員が務めている。縁故入社が多いという。
「カネ井青果で働きたい」という人が社員の周りに多くいるとのこと。
仕事のやりがいが周囲に伝わっているのだ。
カネ井青果は、働く仲間も引き寄せる、いきいき社員で構成されている。

全国で仲卸の会社は1400社ほどあるが、
その中で「働く人にとって一番!」を目指したいと熱く語る藤井社長。
「うちに努める以上、プチ贅沢はしてもらえるようにと思っています」

その、気さくな社長の気持ちよく答えるように、
スタッフの素直で元気な仕事ぶりが印象的だ。

カネ井青果には、社員のチャレンジスピリットを大切にする風土がある。
経験の少ない若い社員にも、責任を負い仕事をしてもらい、
そのチャレンジを全社員がチームワークで応援する。
「どんなことでも挑戦したらいいと思っているんです」と藤井社長は言う。

創立50年を迎えた今、企業価値を高めるための直営店事業も拡大中。
仲卸として培った現場対応力、判断力が会社の発展に寄与した。

 

生産者と生活者をつなぐ「流通」の役割はこれからも重要だ。
環境の変化に柔軟に対応した「青果流通のプロ」として、
次の50年に向けてますます発展されることを心から応援したい。
今日も、カネ井青果のお店には、常連さんたちが集まる。

取材協力  カネ井青果株式会社
公式サイト http://www.kanei-seika.com

 

 

筆者 今尾昌子  コミュニケーション・クリエイター
企業のマーケティングコミュニケーションおよび広報活動の指導や支援活動を行う。特に中小企業の発信力強化に尽力。企業相談や勉強会講師はもとより、ラジオナビゲーターとして中小企業の発信の場づくりに取り組むなどユニークな活動も展開。指導してきた中小企業はのべ1000社以上。認知度向上、企業の活性化に現場目線で取り組む。岐阜市出身。グラン・ルー代表。
公式サイト http://www.mahsa.jp