東海地方発、世の中にインパクトを与える企業・団体・個人の最前線の情報を届けます。

東海最前線

相次ぐ再開発で栄はどのように変わるのか?

東海地方有数の繁華街、栄。
2017年以降、大規模な再開発事業が相次いで発表されています。
栄はどのように変わっていくのでしょうか。
今回は、栄地区の歴史を振り返りつつ、今後の変化を概観します。

戦火を乗り越えて繁栄した東海地方最大級の商業エリア

江戸時代初期に名古屋城が築かれ、いわゆる「清州越し」により、
名古屋城の南に碁盤の目状の城下町が築かれました。
名古屋城および丸の内に行政機関が置かれ、
その南側、西は堀川・江川、東は久屋通、南は若宮通に
囲まれたエリアは町人町となり、現在の栄もここに含まれました。

栄が大きく発展したのは、明治維新以降です。
1887年、東海道線の名古屋停車場が笹島に開業し、
広小路が久屋町から笹島まで続くようになると、
当時の栄町周辺に市役所や県庁、商工会議所などが移動し、
栄が名古屋の中心地となっていきました。

1898年には笹島から県庁前(久屋街)まで
名古屋電気鉄道による路面電車が開通しました。
1910年には、名古屋で初の百貨店となる「いとう呉服店」が
3階建ての建物として栄町に開業しました。
(いとう呉服店は1925に「松坂屋」として大津通に移転)

大正から昭和にかけて、栄町周辺は、名古屋の商業、娯楽の拠点として繁栄し、
広小路沿いには近代的なビルが軒を連ねるようになりました。

しかし、第二次世界大戦(太平洋戦争)によって名古屋の中心地は壊滅的な被害を受け、
栄町に至っては「松坂屋」の建物がわずかに残っただけと言われています。

戦後の復興に伴い、1954年に日本で初めての電波塔である「テレビ塔」が完成し、
1959年に再建された名古屋城とともに、名古屋のシンボルとなります。
また、「丸栄」などの百貨店、「中日ビル」などのオフィスビルが続々と竣工します。
こうして栄地区は東海地方最大の商業地となりました。

 

2000年以降、急速に発展した名駅に対して、再開発が進まなかった栄

2000年代以降は名駅地区が急速に発展しました。
名駅地区は1999年に開業した「JRセントラルタワーズ」を皮切りに、
20年の間に100メートル以上の高層タワービルが11棟も立ち並ぶようになりました。
近年では、2015年に「大名古屋ビルヂング」、
2016年に「シンフォニー豊田ビル」、「JRゲートタワー」
2017年に「JPタワー名古屋」、「グローバルゲート」が相次いで開業しました。

その結果、ヒト、モノ、カネが名駅地区に集まるようになり、
栄の存在感が薄れていくことが懸念されました。

名駅地区は、もともと大企業が名駅周辺に広い自社用地を所有しており、
そこに高層ビルを建てることができたため、急速に発展したという要因があります。

しかし、歴史がある栄地区には地権者が複数いるため、
開発計画が提案されても地権者全員の合意を得ることが難しく、
それが再開発が進まない原因の1つでした。

 

栄の再開発によって、名古屋全体の魅力が高まることが期待される

満を持して、ようやく2017年頃から、
栄の大規模な再開発事業が立て続けに発表されました。
現在、栄地区で進んでいる主な再開発計画は次の通りです。

1.旧住友商事名古屋ビル跡地(東区東桜1・中区錦3)
NTT都市開発が2019年秋から2022年初頭までかけて開発する計画。
20階のビルを建て、隣接のアーバンネット名古屋ビルなどと一体開発する計画。
新たに建設されるビルは、高さ96m、延べ3万900平米、敷地面積約1900平米。
地上1階と地下に店舗が入居し、2階以上はオフィスになる予定です。
この一帯は、周辺環境への配慮といった要件をクリアすることで、
土地を高度利用できる「都市再生特別地区」に、栄地区で初めて指定される見通しです。

出典:NTT都市開発 (仮称)東桜一丁目1番地区建設事業の都市計画決定について

2.久屋大通公園の再整備
錦通りから北側を三井不動産などの事業者が2019年1月~2020年7月にかけて整備。
北エリアは2020年4月、テレビ塔周辺は2020年7月の完成予定。
その後、南エリアも整備予定。
Park-PFI制度のもと、再開発事業者は収益施設の管理運営も手掛ける。
テレビ塔が映る水盤を設置し、シンボリックな景観を生み出す。
合計1万平米の5つの広場と1つのテラスを設置し、多彩なイベントを行う。

出典:名古屋市 久屋大通公園(北エリア・テレビ塔エリア)整備運営事業提案の選定結果

3.名古屋テレビ塔のリニューアル
栄のシンボルである名古屋テレビ塔は2019年1月から休業しており、
免震工事とリニューアル工事が進められています。
レストラン、カフェ、高級ホテル、アミューズメントゾーンが
2020年7月に開業する予定です。

4.中日ビルの建て替え(中区栄4丁目)
中日新聞社が保有する旧中日ビルは2019年3月31日に休館し、
2024年度の完成を目指して新ビルが建設される計画です。
新ビルは高さ約170m、地上31階・地下4階、延べ床面積約113,000平米となり、
B1階から3階までは商業施設、4階から22階はオフィス、
6階に多目的ホール、23階から31階は250室のホテルとなる計画です。

出典:中部日本ビルディング・中日新聞社 中日ビル建て替えの基本計画について

5.栄バスターミナル跡地暫定活用事業
中日新聞社などの企業グループが運営事業者となり、集客と交流の拠点を創出。
多彩なイベントを開催できるステージのある広場や、
バーベキューレストランやカフェを運営する計画です。

出典:名古屋市 栄バスターミナル(噴水南のりば)跡地暫定活用事業提案の選定結果

6.栄広場周辺開発(中区錦3丁目)
栄の中心にありながら、長年に渡って高度利用がされてこなかった土地です。
約1800平米の市有地と、大丸松坂屋が持つ約3000平米の土地を合わせて
名古屋市と「J・フロントリテイリング(大丸松坂屋グループ)」が
高層ビルの建設計画を発表。2019年度に事業者が公募され、2024年の開業を目指します。

出典:大丸松坂屋百貨店 錦三丁目25番街区の開発を名古屋市と共同で推進します

7.丸栄跡地の再開発(中区栄3丁目・錦3丁目)
丸栄の所有会社である興和により、
北側の栄町ビルとニューサカエビルを含め一体で商業施設を建設する計画です。
2027年の開業が目標とされています。

8.長者町の複合ビル建設(中区錦2丁目)
野村不動産などの再開発組合が2018年度末から2021年にかけて2棟のビルを建設。
1棟は約360戸のマンションが入る地上30階・地下1階建て、敷地面積は約4000平米。
もう1棟は商業施設が入る地上5階建て、敷地面積約1000平米の複合ビルの予定。

出典:野村不動産等 「名古屋・錦二丁目7番第一種市街地再開発事業」着工のお知らせ

 

これらの再開発によって、栄地区はどのように変わるのでしょうか?

従来からの栄の魅力とは、地上の百貨店や小売店、飲食店などと、
全国で2番目の規模の地下街に広がる様々な店舗や施設を回遊して楽しめること、
また、憩いの場や交流スペースにもなる久屋大通り公園が中心にあり、
テレビ塔やオアシス21などがシンボルとなっていることだと言えます。

現在予定されている再開発計画は、これらの栄の魅力をさらに引き立て、
特に久屋大通公園の再整備により交流機能が高めることで、
栄の新たな魅力を創出するものと言えるのではないでしょうか。

従来から、名古屋は「魅力がない都市」だと言われ続けてきました。
栄の再開発によって、栄の魅力が高まると、
名古屋全体への波及効果が期待でき、魅力が高まることが期待されます。

これからの栄の変化に期待が膨らみます。

【参考資料】
・名古屋栄140年の変遷  http://network2010.org/article/1523・変貌する名古屋駅前Ⅳ https://www.okb-kri.jp/_userdata/pdf/report/135-3-22.pdf・中区のなりたち http://www.city.nagoya.jp/naka/page/0000001937.html・総務局統計課 × 名古屋都市センター コラボ企画
 まちづくり・人口・経済から振り返る名古屋の「平成」30年間・ホームズ 2027年には名古屋の栄(さかえ)が生まれ変わる?「栄地区グランドビジョン」とは!・2018/10/28 毎日新聞 中部版 29ページ「追跡2018:リニア開通や老朽化、
 動き出す再開発 「地域一」栄の意地」
NTT都市開発 (仮称)東桜一丁目1番地区建設事業の都市計画決定について名古屋市 久屋大通公園(北エリア・テレビ塔エリア)整備運営事業提案の選定結果・2017/11/20 日本経済新聞電子版 「野村不動産など4社 名古屋・錦で大型再開発」・中部日本ビルディング・中日新聞社 中日ビル建て替えの基本計画について・大丸松坂屋百貨店 錦三丁目25番街区の開発を名古屋市と共同で推進します栄バスターミナル(噴水南のりば)跡地暫定活用事業提案の選定結果・野村不動産等 「名古屋・錦二丁目7番第一種市街地再開発事業」着工のお知らせ
 

著者:ポメラニアン高橋 & 東海最前線編集部
撮影:ポメラニアン高橋

ポメラニアン高橋 フリーライター&編集者
東京から岐阜県に移住してきたフリーランス型ポメラニアン。編集プロダクションにてレストラン取材や芸能人インタビューなどを経験し、2017年に独立。
詳細な実績やプロフィール

東海最前線編集部