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東海最前線

中小製造業に最適な「半自動化」の普及に取り組む岐阜の設計開発会社

製造業向けに製造現場の設計開発を行うPLANSEED(以下「同社」)。
岐阜市大福町にある本社を訪ねた。

社名「PLANSEED」はカタカナではなく、あえてアルファベットである。
「PLAN」は計画であり、お客様の未来を指す。
「SEED」はお客様の想いの種であり、課題の種。
その種をお客様と一緒に、未来に向かって育んでいきたいとの思いと、
日本のみならず世界でも通用する会社になりたいとの願いから、
この会社名になったという。

同社の創業は2006年。もともと大手企業を相手に生産技術を提供していた
細野晃社長が、20年の現場経験で培った構想力と設計力を生かし、
お客様の課題を一緒に解決したいとの思いで創業した。

同社は、単純作業や重労働は機械を使って自動化し、
社員には人ならではの付加価値の高い仕事を任せて生産性を高める、
「半自動化(ハーフオートメーション®)」というコンセプトを提唱している。
2020年には「ハーフオートメーション®」を商標登録した。

 

なぜ「ハーフオートメーション®」を提唱するのか?

同社はなぜ「フルオートメーション」ではなく
「ハーフオートメーション®」を提唱するのか。

日本の中小製造業は、多品種小ロット生産をしているところが多く、
多品種の製造プロセスを共通化できない困難さや、
既存設備との融合が難しいなど、簡単に自動化ができない要因がある。
さらに、中小製造業の収益は限られているため、
全ての製造プロセスを自動化するような設備投資は負担が大きすぎて、
投資を回収できなくなる。

そこで、様々な業種業態や製造プロセスに応じて、
人にとって作業負荷が高い、一部の単純作業や悪環境の作業に絞り、
投資を抑えた最適・最小の自動化を導入して生産性を向上することが、
「ハーフオートメーション®」のコンセプトだ。

これを実践するため、同社には生産現場、機械組立、生産機械を
それぞれ熟知したスタッフがいて、相手や課題に合わせ、チームで対応している。

さらに、中小企業の悩みは、単に製造プロセスの生産性の問題だけでなく、
人の問題と一体であることが多い。
人の問題は、特に経営者と従業員の関係に生まれやすい。
例えば次のような状況が中小企業に散見される。
・経営者の想いが従業員個人の目標まで落とし込まれていない。
・経営者が目先の収益にとらわれすぎて、従業員の提案を否定してしまう。
・従業員が納得しない状況、経営者の思いだけ先走って自動化を進めてしまい、
 せっかく導入した設備が活用されない。

生産性の問題と人の問題、この2つを同時に解決しなければ、
中小企業の自動化は進まない。細野社長は、それを自分たちがそれをやろうと考えた。
同社は「ハーフオートメーション®」を通して、
「人の問題解決×生産性向上」を一緒に進める企業革新を実現しようとしている。

 

「ハーフオートメーション®」の普及に積極的に取り組む

同社は新規顧客の掘り起こしにも積極的だ。
生産現場を一度刷新、構築すれば、安定供給できる環境が整う。
常に新しい現場に目を向け、悩める中小企業との出会いをつくろうとしている。

同社では2018年から「半自動化」に関するセミナーを開始している。
セミナーでは、日本における労働人口の減少を踏まえ、
現実的な半自動化実例、協働ロボットの特徴について実例を示しながら解説。
経営者や現場責任者に、未来に向かうモノづくりの現状と今後について、
しっかり認識していただくことを意図としている。

そこで問題意識をもった企業の個別相談に応じ、
それぞれの課題をどうすればよいかを一緒に考え、支援するという流れだ。

同社はこれまで100社以上の企業の生産性向上に取り組んできたが、
実績の一例をご紹介する。

1.食材加工業
人の手で行っていた加工を協働ロボットで対応。
この作業を担ってきた担当者は検査工程へ移動し、品質向上に貢献。

2.地元の伝統産業である刃物生産業
人が専任で担っていた、はさみの粗削り作業を半自動化で対応。
この導入により、担当者は他の作業を兼任できるようになり、生産性が向上。

3.機械部品加工業
既存の機械加工機への投入・取出を協働ロボット半自動化で対応。
その作業に携わってきた担当者は、品種切替時のみ刃物交換するだけになり、
高付加価値製品への生産に従事することで、生産性が向上。

このように、さまざまな業界で事例が増えつつある。
顧客からは、
「生産性が向上した」
「人手不足が解決した」
「人手に頼りすぎてきた生産計画や経営計画を見直すきっかけになった」
との嬉しい声も多数いただいているようだ。

同社のサービスは1社1社、生産現場ごとに異なるが、
大まかな流れとしては、現地調査、ヒアリング、構想、御見積、本設計、製作
の流れで進む。ここまでに要する時間は約3か月。

構想の段階からは、経営者だけでなく従業員も参加し、一緒に検討することもある。
半自動化を実現した後も、人事評価制度の構築まで一緒に取り組むこともあり、
顧客によっては長くて1年かかることもあるようだ。

長い時間を要するハーフオートメーション®の実現には、社内のチームワークも重要だ。
同社ではコミュニケーション研修なども導入し、チームワークを高める努力を行っている。

コロナショックに応じた前向きな取り組み

同社はこのたびの新型コロナウイルスのショックに対しても
前向きな取り組みを発表している。

マスクや人工呼吸器などを製造する現場の安定生産に役立てばとの思いで、
衛生品・医療関係のモノづくりをされている企業を応援するため、
東海地区の製造業を対象に「設計費無料」で対応する支援プランを開始、
7月末まで受け付けている。
関係者に呼びかけを続け、メディアでも取り上げられた。

また、コロナショックでは、多くの中小製造業も大きな影響を受けており、
収益悪化のため設備投資に悩む企業も多い。

この機会に補助金を利用して「ハーフオートメーション®」に
取り組んでいただきたいとの思いで、
「現地調査、構想設計、自動化見積、ものづくり補助金申請代行」を
パッケージにして提供する支援をスタートした。
同社のパートナー専門家(行政書士)もチームとして取り組む。

 

中小企業をもっと元気にする「何でも屋」

「ハーフオートメーション®」でモノづくりを変える。
この新しい発想と行動の原動力は?と尋ねると、細野社長はこう答える。
「弊社の企業理念は『中小企業をもっと元気にする価値創造企業』であること。
 中小企業様をもっと元気にする方法はないか、
 企業価値を高めていただけることはないかと、常に考えて行動しております。
 どうしたらお役に立てるか、どうしたらどうしたらと常に考えているので、
 このことがいつの間にか、自分の原動力になっていると思いますね。」

同社は「何屋さんですか?」と尋ねられることも増えているようだ。
細野社長は、あえて「何でも屋」と答えているとのこと。
同社は中小企業をもっと元気にする価値創造企業であるため、
その中小企業が元気になれるならば、何でもやると決めている。
その意味では、これからもっと「何屋さん?」って聞かれるようにしたいとのこと。
そこにライバルはいない。

東海地方にはものづくりをする中小企業が多数ある。
「中小企業が元気でなければ、日本は元気にならない!」
と細野社長は意気込む。

2020年のコロナショックの中でも同社はぶれることがない。
今年はますます「ハーフオートメーション®」を広める年にしたいとのこと。
展示会の参加やメディアへの発信、セミナーの定期開催を積極的に行おうと決めた。
東海地区の企業に、自分たちの考えをもっと知ってほしいと思っている。

コロナショックに対しても細野社長は次のように考えている。
「今は、コロナ渦で本当に大変な時期です。しかし、必ず終息を迎えます。
 解釈ひとつで未来は変わると信じています。
 その解釈とは、『普段できないことをやれる』とか、
 『未来を変える為に自動化へ一歩踏み出す』ということです」
 前向きに、コロナに負けず、地元の中小企業とともに
 このピンチをチャンスと捉え、ともに歩んでいきたいと思います。」

PLANSEED株式会社 細野晃社長

 

取材協力 PLANSEED株式会社
https://plan-seed.co.jp/

 

 

筆者 今尾昌子  コミュニケーション・クリエイター
企業のマーケティングコミュニケーションおよび広報活動の指導や支援活動を行う。特に中小企業の発信力強化に尽力。企業相談や勉強会講師はもとより、ラジオナビゲーターとして中小企業の発信の場づくりに取り組むなどユニークな活動も展開。指導してきた中小企業はのべ1000社以上。認知度向上、企業の活性化に現場目線で取り組む。岐阜市出身。グラン・ルー代表。
公式サイト http://www.mahsa.jp