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明治維新から150年、尾張藩14代藩主 徳川慶勝公の写真展・講演会を愛知県内10か所で開催

今年は、明治維新から150年であり、明治維新に大きな役割を果たした、尾張藩14代藩主 徳川慶勝公の没後135年にあたります。これらを記念して「日本の伝統文化をつなぐ実行委員会」は、徳川慶勝公が幕末から明治にかけて撮影した貴重な写真を、それぞれのゆかりの地で特別展示します。これらの写真展や講演・文化財の展示に、それぞれのゆかりの地で接していただくことを通して、多くの方に、江戸から明治、そして現代への時代の転換に思いを馳せていただくことを狙いとしています。 このたび、この展示を愛知県内で、前期は2018年9月23日~2018年10月26日に4か所で、後期は2018年11月10日~2019年2月3日に6か所で開催します。

「尾張の遺産、殿様の写真 特別な展覧会」Webサイト https://owari-heritage.localinfo.jp/

明治維新の功労者、尾張の“写真大名”「徳川慶勝」とは?

▲徳川慶勝

 はじめに、本写真展の主役である徳川慶勝について解説します。慶勝公は、徳川御三家筆頭でありながら、明治維新においては討幕側(新政府側)に味方して重要な役割を果たしました。それは、明治維新の内乱を長引かせず、列強諸国につけ入る隙を与えないようにとの、日本の将来を見据えた判断のためです。しかしその決断は、慶勝の実弟である会津松平家藩主・京都守護職の松平容保、桑名藩主・京都所司代の松平定敬と敵対して戦わざるを得ないという非情なものでもありました。このときの慶勝公の決断がなければ、日本の近代化はかなり遅れたかもしれません。

そんな慶勝公には、「写真家」としての一面がありました。慶勝公が撮影したとされる写真が1000点以上見つかっています。当時の名古屋城内の写真をはじめとする、歴史的価値の高い写真です。慶勝公が写真に興味を持ったのは、30歳を過ぎた1858年(安政5年)頃といわれています。欧米から写真技術が伝来した間もない頃です。

当時、大老として幕府の実権を握っていた井伊直弼が、朝廷の許しを得ずにアメリカと日米修好通商条約を結びました。慶勝公は前水戸藩主の「徳川斉昭」らと共に江戸城へ乗り込み、これに抗議しました。井伊直弼は反対派への弾圧として「安政の大獄」を始め、慶勝公は隠居謹慎を命じられました。この謹慎中に、慶勝公は写真技術の研究に没頭したそうです。

▲慶勝公の娘:良子

 慶勝公はさまざまな写真を撮影しました。当時の名古屋城内外の写真、尾張徳川家の肖像写真、庶民が祭りを楽しんでいる様子などです。一人の父として、側室との娘・良子の成長を記録する写真もあります。そんな当時の尾張と人々の模様を描く写真が、今回の写真展で披露されます。尾張のさまざまな歴史に触れられる、貴重な機会となります。

“場が持つ力を感じて欲しい”主催者が語る「写真展の見所」

▲日本の伝統文化をつなぐ実行委員会:市川櫻香さん

写真展の主催である「日本の伝統文化をつなぐ実行委員会」の市川櫻香(いちかわおうか)さんと柴川葉月(しばかわはづき)さんにお話を伺いました。

9月23日に開催される名古屋城での展示をはじめ、一つひとつの見所を聞かせていただきます。市川さんは女性だけが所属する「むすめ歌舞伎」を運営するなど、尾張伝統芸能界を牽引してきた方です。今回、なぜ、徳川慶勝の写真展を開催されたのでしょうか。

——今回の写真展を開催に至った経緯を教えてください。

市川さん:現代人に150年前まで存在していた「武士文化」を知ってもらいたいと考えていました。150年前って、それほど遠くない過去なんです。当時の男性達は髷を結っていたし、袴も穿いていた。その文化がある日をもって無くなったわけですが、事実として存在していたんですよ。ここにはかつて、たくさんの武士や小姓などがいた。慶勝公の写真を通じて、「昔ってこうだったんだなぁ……」と振り返ってもらいたい。そういう想いから写真展を企画しました。

——なるほど。第一回目となる「名古屋城へ里帰り」には、どういった意味を込めているのでしょうか?

市川さん:名古屋城って、元々は德川家の持ち物だったんですよ。それが気づいたら、「名古屋市民のもの」になっていた。精神的に里帰りという意味も込めて、この名称に決めたんです。

▲日本の伝統文化をつなぐ実行委員会の柴川葉月(しばかわはづき)さん

——当日は写真展以外にも、雅楽の披露や講演会などが行われるようですね。

オープニングセレモニーとして、「名古屋東照宮雅楽部」による演奏が披露されます。名古屋城では150年ぶりの演奏なんですよ。それと同時に、「慶勝って、誰?」という講演も予定しています。甲南女子大学の先生をお招きして、メディア文化論と学芸員の見解から、慶勝公の写真を解説していただきます。私も聞き手として出演しますので、ぜひご覧になっていただければと思います。

——慶勝公が撮影した写真には、一体どのようなものがあるのでしょうか?

当時、慶勝公が各地で撮影したものを展示します。第一回となる名古屋城であれば、当時の尾張の風景や、お殿様にしか撮れない名古屋城内外の写真が見所ですよ。「昔ってこうだったの!?」と驚いてもらえたら嬉しいです(笑)ちなみに、各地で行われる写真展は、それぞれ展示写真が若干違います。訪れる度に新しい写真が楽しめると思いますよ。

——10月7日有松・岡家でも開催を予定しますが、こちらの見所はいかがでしょうか?

市川さん:当時の有松って、辺りに何もない野原のような場所だったんです。そこを開墾して、「有松絞り」などの産業を作って、街を築き上げていった。お殿様が主導になり、庶民と一緒に働いたわけですね。当時の有松の風景も慶勝公は撮影していますので、もちろん展示する予定です。同時に岡家が営んでいた「有松絞り」の展示も予定します。

——当日は秋祭りも開催されるようですね。

「有松天満社秋季大祭」の開催を予定しています。尾張の山車が楽しめる秋祭りですね。あと、有松の歴史と文化を学べる講演も予定しているので、ぜひ参加してもらえたら嬉しいです。写真を見ながら、有松の歴史話に花を咲かせる。そんな楽しみ方もできますよ。

——10月21日に亀崎・神前神社にて行われる写真展についてはいかがでしょうか?

市川さん:亀先は、尾張文化を象徴する町として知られています。「尾張からくり」などが有名ですね。あと、古くから祭り好きが集まる町として知られています。当時のお祭りの様子を映した写真を見てもらいたいですね。たとえば、山車の様子を映した写真とか……庶民がお殿様のために披露した山車ですが、それを殿様が撮影しているのが面白いですね。当日は、早朝6時から「棧掛(はしかけ)祭」という地元の例大祭が催されます。地元の祭りについて解説する講演も予定していますので、そちらも覗いていただけたらと思います。

——写真展と有識者による講演がセットになっているのはなぜですか?

市川さん:「日本の伝統文化をつなぐ実行委員会」は文字通り、伝統芸能を繋ぐことを目的に設立されました。でも、それは舞台芸術のだけの話ではありません。さまざまな有識者に講演してもらい、人と人を繋ぐことを焦点に当てています。彼等の話を聞いて、より尾張文化への理解を深めてもらえたら嬉しいですね。

——10月26日から約1ヶ月もの間、名古屋能楽堂・展示室でも写真展を開催するそうですね。こちらの見所は?

柴川さん:こちらは展示を中心に、私が担当しています。慶勝公が撮影した写真はもちろん、「有松絞り」といった工芸品の展示も予定していますよ。尾張に関する貴重な品がたくさん並ぶので、写真と一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです。入場料も無料ですし、開催期間も長めなので、お気軽に立ち寄ってもらえたらと思います。

——最後に、来場者へ何かメッセージをいただけますでしょうか。

市川さん:写真を通じて場が持つ力を感じてもらいたいですね。慶勝公の写真は、名古屋市にある「徳川美術館」にも展示されています。でも、美術館で見る時と、名古屋城で見る時では、捉え方・感じ方に違いがあると思うんです。肉体は消えても、その想いは良い意味で残っている。ぜひ、その歴史が生まれた場所に足を運んで、ここに生き・死んでいった人達の想いを感じてもらえればと思います。

柴川さん:私は今年で24歳になるのですが、特に同世代の人達に見てもらいたです。また、尾張の歴史を知ることは、子どもたちにとっての教育にもなります。高校生以下の方は入場料無料ですので、お子さんを連れてお越しいただけたらと思います。

——ありがとうございました。

慶勝公の写真を通じて、尾張の歴史を探ろう

▲「黒金ヒロシ」さんが表紙イラストを手がけたづつり帳

この写真展には5,000円のパスポートもあります。全て展示の入場料が無料になり、講演は500円引き、さらに2018年11月24日(日)と2019年2月3日(日)の名古屋能楽堂での公演にもご招待と、お得です。家族や友人たちと楽しみながら、各地で尾張の歴史を探っていただける、またとない機会といえます。

公式グッズとして、漫画家の「黒鉄ヒロシ」さんが表紙を手がけたつづり帳も販売されます。これは御朱印帳などとして使っていただけるものです。黒鉄さんは、後期に開催を予定している「幕末から医師へ、物思ふ(11月24日:名古屋能楽堂)」という講演の講師にも招かれています。それに先だって、11月9日には京都・金戒光明寺でも写真展が開催されます。京都が名古屋(尾張)の文化を取り上げるのは、今回が初めてだそうです。

■「尾張の遺産 殿様の写真 特別な展覧会」(前期)の開催情報

 

▲イベントパンフレット

本写真展は、オープニングセレモニーが催される9月23日の「名古屋城へ里帰り」を皮切りに、愛知県内で前期4回、後期6回の計10回開催されます。このうち前期の開催スケジュールは次の通りです。

1.写真展「名古屋城へ里帰り」

藩主であった慶勝にしか撮れない名古屋城の写真を中心に、屏風に仕立てて展示します。これらの写真が、およそ150年前に撮られた現場に里帰りします。また、名古屋城ではおよそ150年ぶりに雅楽が演奏されます。

●写真展:「名古屋城へ里帰り」

・開催日時:2018年9月23日(日) 11:00~16:30/9月24日(祝) 9:30~16:30(名古屋城開園時間 9:00~16:30) ・会場:名古屋城孔雀之間 ・鑑賞料:500円(名古屋城入場料は別途500円)

●オープニングセレモニー「尾張徳川の雅楽」

雅楽は、平安時代から公儀のに用いられてきた芸能です。能楽と同様に祀りごとや尾張徳川家の行事で演奏されてきました。今回、名古屋城では150年ぶりの演奏となります。 ・開催日時:2018年9月23日(日)10:30 ~ ※雨天中止 ・会場:本丸御殿 北側前庭 ・演奏:名古屋東照宮雅楽部[笙・篳篥・龍笛] ・参加費:無料

●講演:「慶勝って誰?」

メディア評論家と学芸員の見解から、殿様の写真談を写真屏風と共に論じます。 ・開催日時:2018年9月23日(日)11:00 ~ ・会場:名古屋城孔雀之間 ・参加費:500円(名古屋城入場料は別途500円) ・講師:馬場伸彦(甲南女子大学教員)、原 史彦(徳川美術館学芸部) ・聞き手:市川櫻香

2.写真展「お殿様の愛した辻が花、想像の日本文化」

かつて有松絞りを営んでいた岡家。開墾が難しかった土地に1608年に開かれた有松。慶勝公の北海道八雲町開拓の写真や東京・名古屋の風景写真と絞りを展示します。有松絞りとともに400年続いた歴史に思いを馳せます。

●写真展「お殿様の愛した辻が花、想像の日本文化」

・開催日時:2018年10月7日(日) 10:00~17:00(入館は16:30まで) ・会場:有松 岡家(名古屋市指定有形文化財) ・鑑賞料:500円

●講演「描かれた有松」

名所図会や浮世絵に描かれた有松から読みとれる、有松の歴史と文化を解説します。 ・開催日時:2018年10月7日(日)11:00~ ・参加費:1,500円 ※有松絞りのお土産付き ・講師:山本祐子(名古屋市博物館調査研究員) ・会場:有松 岡家(名古屋市緑区有松809、名鉄「有松駅」より徒歩3分)

●祭礼「尾張の山車・秋祭り」

当日、有松では山車三台が東海道を曳行される『有松天満社秋季大祭』が行われます。有松は慶長13年(1608)尾張藩より東海道の鳴海宿と池鯉鮒宿の間に新町(あらまち)として開かれました。 ・開催日時:2018年10月7日(日) 〈昼〉9:30~14:30 〈夜〉18:00~21:00

3.写真展「古き尾張の風景」

亀崎 神前神社で行われる、ユネスコ無形文化遺産に認定された「亀崎潮干祭」は山車が有名です。慶勝公が写した山車の写真も展示します。慶勝公も見たものとほとんど変わらない、亀崎の海と古き尾張の風景を体感します。

●写真展「古き尾張の風景」

・開催日時:2018年10月21日(日)13:00~17:00(入館は16:00まで) ・参加費:500円 ・会場:神前神社 社務所(愛知県半田市亀崎町2丁目92) ・アクセス:JR武豊線「亀崎駅」下車・徒歩10分

●講演「江戸文化交流地」 亀崎が港町として人々が行き交い、文化の交流地となった経緯や、ユネスコ無形文化遺産にも登録された亀崎潮干祭について解説します。

・開催日時:2018年10月21日(日)14:00~15:00 ・会場:神前神社 社務所 ・講師:成田吉毅(潮干祭を代々支える成田家の祭人・修復士/美術研究所講師) ・参加費:1,500円 ※地域限定お土産付き

●祭礼「棧掛祭とろじうら」

早朝6時より山車ののぼりを立てて始まります。午前中の神事に続いて、午後には境内内で奉納余興や厄年会による餅投げなどが行われています。夜には各組車元から神前神社へ、打ち囃子の奉納が行われます。昔ながらの建物や風景が残る亀崎町全体を会場として「ろじうら」イベントも開催します。 ・開催日時:2018年10月21日(日) 6:00~ (「ろじうら」11:00~20:00頃)

4.展示「殿様の写真と尾張の芸能を辿る」

展示1:殿様の写真から見る「佇まい」という香気。

慶勝公が撮影した写真のほか、有松絞りや亀崎の山車(一部)などを展示します。

展示2:尾張の遺産で、日本の演劇・芸能史に触れてみよう!

知立神社 舞楽面、知立山車文楽人形、半田亀崎のからくり、尾張藩士「猿猴庵」日記、御園座創立パンフレットなどを、尾張の文化遺産として展示します。 ・開催日時:10月26日(金)~11月28日(水) 9:00~17:00 ※11月28日は15:00まで ・会場:名古屋能楽堂 展示室(愛知県名古屋市三の丸1-1-1) ・鑑賞料:無料 ・アクセス:地下鉄鶴舞線「浅間町」1番出口より東へ徒歩10分/地下鉄名城線「市役所」7番出口より西へ徒歩12分/市バス「名古屋城正門前」すぐ ※やっとかめ文化祭協賛事業

 

それぞれの催しの詳細は「日本の伝統文化をつなぐ実行委員会」のWebサイトに掲載されています。本記事ではご紹介できなかった情報や、下期の開催予定については、こちらをご確認ください。

「尾張の遺産、殿様の写真 特別な展覧会」Webサイト https://owari-heritage.localinfo.jp/