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東海最前線

着物から始まった「お客様の人生をかけがえのないドラマにする」お手伝い

自らのキャリアを生かし、独立・起業へ

 花火で有名な長岡の町。城下町でもあったなごりか、和の文化が今もこの町に根づいている。花火シーズン以外は落ち着きのある町であるが、そんななかに和装のレンタル業を独自路線で切り開いている元気な起業家がいる。

 この社長さん、悦子さんという。凛とした透明感ある美しさが印象的だ。独身時代はOLをされていたが、その後、結婚を機に美容師になり、研鑽も積んだ。一方、着物文化に対しての興味もあり、個人的にさまざまな珍しい着物を収集したり、研究したり・・その結果、和装のレンタル業を地元でスタートすることになった。

 花火シーズンはゆかたのレンタル需要が多い。最近では外国人からの注文も増えつつあり、この機会をうまく生かせば厳しい夏の和装需要喚起も可能となる。おかげでこの時期は観光客の来場とともにゆかたレンタルも盛況であったという。しかし、短いイベント時期だけに期待するわけにはいかない。悦子さんは自らが美容師であるという点から、ヘアメイクから着付けまでができる点を生かし、地元の結婚式場とも連携しながら、ブライダルの仕事も多く手掛けてきた。

 

時代の変化に対応した、新たなサービスを次々発案・実施へ

 技術力やセンスの良さから指名も多く、順調にオーダーをこなしてきたが、結婚式のスタイル自体が変わり、昔ほどの需要はなくなった。予算の都合で、結婚式を挙げない人もいる・・・。そのような中、自分ができることは何か。悦子さんは、このままではいけないと、新たな展開を模索する。

 まず一つ目は、水引のアクセサリーの企画販売。和装に合うオリジナル小物として、お客様に手軽に買い、使ってもらえる商品として考案した。ブローチ、ネックレス、イヤリング、ヘアバレッタなど、どれも使いやすいアイテム。これなら、和装に限らず普段から使えそうだ。この水引アクセサリーは「時代結び」と名付けられた。

 名の由来は、これからのアクセサリーに各時代ごとの色を名付けたことから。たとえば、明治時代の色ならば「赤煉瓦」「女学生」「藤紫」など。それぞれの時代を象徴するモノ・コトやその時代の和装のイメージと関連させたテーマを時代の色として提案している点が特徴だ。和装の専門家ならではの色提案が小物に活きている。好みの、憧れの時代の色のアクセサリーを身に付け、その時代に触れてほしいという思いから生まれたこのシリーズ、なかなかの発想力だ。これまで和装ファッションのトレンドを研究し尽くしてきたからのセンスと分析力そして提案力。これにより新しい和のアクセサリーが誕生、ネットやイベント会場などで好調な販売を続けている。

 悦子さんはさらに新事業を発案する。次なる企画は「時代きもの写真婚」なるサービス。先述のとおり、悦子さんは着物に高い関心をもち、個人的にいろんな着物をコレクションしてきた。そのなかでも、大切にしてきたのが、各時代の婚礼衣装だ。明治、大正、昭和、平成。今日は、結婚式を挙げない人が増えてきたが、せめて写真は撮りたい、残したいというニーズがあり、それならば、この貴重な衣装をまとっての撮影をという、斬新な提案だ。昭和や平成の衣装ならば、想像もできるが、大正や明治の婚礼衣装を試せるなんて、夢のような話。全国から世代を超えて、問い合わせが寄せられているそうだ。昭和の時代に、結婚式ができなかったから・・・という年配のご夫妻にもおすすめだそうだ。

 

人生の最高の、ラストブロマイドづくり

 この「時代きもの写真婚」を始めてみてお客様からこんな声があった。「夫婦の写真もいいけれど、一人でいい写真を作りたいわね~」。意外とそれを求める女性の声が多いことに気づき、悦子さんは新たなサービスをさらに考案。

 生まれたのが「ハレの日の笑み子さん」なる企画。女性たちの永遠の憧れである、人生最高の1枚を、プロの手によるヘアメイク・和装・写真とワンストップで提供するというもの。美しい着物を来て、ヘアもお化粧もキレイに仕上げてもらって、そのまま撮影。こんな年になって、そんなハレの日はもうないだろうと諦めていた女性たちに潜んでいた願望をかなえてくれる、そんなうれしい企画だ。

 写真は84歳のモデルさんの作品。実は悦子さんのお母様だ。お母様が元気なうちに・・と今回、母娘の共同作品となった。その出来栄えに、お母さまもたいそうお喜びとのことで、娘の悦子さんもご自身の手で、お母さまをこんなにきれいに変身させることができ、この企画への意欲がさらに高まった。誰もが美しくなると、笑みが生まれる。人生を素敵に駆け抜けてきた女性たちに、最高の人生を結んで欲しいという願いから生まれたサービスだ。

 

自分の感性と能力の可能性を無限に広げる挑戦へ

 このように、女性ならではの感性と、技術で新しいサービスを次々と実現させてきた悦子さん。このようなオリジナルの新サービスを手掛けながら、従来の婚礼や和装レンタル業もこなし、さらには、着物をアートとして見せる作品づくりにも余念がない。

 たとえば、有名日本画家の作品の登場人物や、150年前の芸妓さんの髪型を写真を手掛かりに、実際のモデルを使って、地毛結いして再現するイベントを企画・実施。また、AIと着物とのコラボといった作品づくりを試みるなど、斬新な企画にも意欲的にトライし続けている。地元の和文化に携わる異業種の企業にも働きかけ、長岡の和の文化を地元だけでなく、県外にも発信しようと準備中である。この働きかけには、旅館や料亭の女将さんたちも協力的で、意欲的だ。まさに女性感覚を生かした、しなやかで柔軟な発想と、たくましい行動力あってのチャレンジだと言える。

 悦子さんのサービス展開は発想力や行動力以外には、次のことがポイントだったと考えます。
 1)「着物」が縦軸としてあり、それを「時代」という横軸と組み合わせ、魅力的に表現したこと
 2)お客様の声も受けながら潜在していたニーズを見つけ、「お客様の人生のかけがえのないドラマを作る」という観点から様々なサービス展開を実現したこと

 着物は日本の文化のシンボル。それをモチーフに、さまざまなコラボを仕掛けている悦子さんの活躍はこれからも止まることがなく、輝きながら、前進を続けることだろう。

(協力 縁 enishi

筆者 今尾昌子  コミュニケーション・クリエイター
企業のマーケティングコミュニケーションおよび広報活動の指導や支援活動を行う。特に中小企業の発信力強化に尽力。企業相談や勉強会講師はもとより、ラジオナビゲーターとして中小企業の発信の場づくりに取り組むなどユニークな活動も展開。指導してきた中小企業はのべ1000社以上。認知度向上、企業の活性化に現場目線で取り組む。岐阜市出身。
グラン・ルー代表。
公式サイト http://www.mahsa.jp