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世界5地域のインテリア空間を体験できる「ショールーム型オフィス」をオープン(株式会社Imaeda Design)

 昨今、働き方改革の影響を受けて、東海地方でも「働きやすいオフィス」への関心が高まっています。オフィスや店舗・住宅の空間デザインを手がけるImaeda Designにも、近年、オフィス空間デザインの依頼が増えているようです。Imaeda Designはこのような関心の高まりを受けて、このたび、名古屋市中区の本社に「エアライン(旅客機)」をコンセプトとした、世界5地域のインテリア空間を体験することができる「ショールーム型オフィス」(以下「本オフィス」)をオープンしました。12月から一般企業等の見学の予約を開始しています。いったい、どのようなオフィスなのでしょうか?

エアラインをコンセプトにしたショールーム型オフィス

本オフィスのコンセプトを「エアライン」としたのは、エアラインが、様々なスタッフの協力によって、お客様を安全・快適に目的地に到着させるように、同社では様々なスタッフが協力して、お客様が望む空間デザインを実現(目的地に到着させる)するということを表現しているそうです。本オフィスは、大きく分けると来客用の打ち合わせエリアとワークスペースなどのスタッフ用のエリアに分かれています。

 ▲入口の扉を開けると、空港のチェックインカウンターのような受付が目に飛び込んできます。液晶モニターには、当日の来客予定などが表示されています。

世界のインテリア空間旅行ができる打合せエリア

 来客用スペースでは、世界のインテリア空間旅行を体験することができます。訪問したお客様は、海外5地域(ニューヨーク、ハワイ、フランス、イタリア、北欧)をテーマにした打ち合わせエリアに到着します。各エリアではテーブル、椅子、照明、壁紙、小物により、それぞれの地域のインテリア空間を演出しています。来客時の打ち合わせでは、これらの内装やインテリアもお客様がオフィスのイメージを描いていただくための材料にもなります。それぞれの打ち合わせエリアを紹介します。

 ▲ニューヨークは、機能的なチェア、レンガ風に見える壁紙、壁にかかる写真やアート、ネオンサインがニューヨークらしさを感じさせます。

 ▲フランスは、白を基調としながら、自然素材が採り入れられ、リゾートスタイルを感じさせるコーディネートです。

 ▲イタリアは、黒・白・グレーの三色をベースに、アクセントとして赤色のクッションを配置したコーディネートです。スタイリッシュモダンなインテリアで洗練された印象です。

 ▲北欧と言えば、近年、北欧インテリアの人気も高まっています。木製家具が中心で、温もりを感じさせるシンプルなコーディネートです。

 ▲ハワイは、木材が多く使われ、ハワイアンスタイルを感じさせるコーディネートです。お子様連れのお客様が、お子様を遊ばせる部屋としても使えます。キャビネットは開くと落書きができるホワイトボードになります。

いずれも、それぞれの地域の雰囲気を感じることができる打ち合わせエリアです。

 

スタイリッシュで働きやすいオフィス

 ▲ワークスペースに続く通路は滑走路をモチーフにしてあります。両側の壁には、これまでにImaeda Designが手掛けてきた空間デザインの事例の写真が掲示されています。

 ▲ファーストクラスをイメージしたラウンジ。10名程度の打ち合わせやパーティーなどができます。頭上の荷物入れ型の収納も活用しています。

 ▲ワークスペースは、おしゃれで落ち着きのある空間です。スタッフの方々もリラックスした表情で仕事に打ち込んでいました。コミュニケーションをとりやすくなっています。

 ▲フロア内に設置された作業台では、立ったままカタログ閲覧や打ち合わせをすることができます。業務に必要なカタログなどの資料は、このテーブルを中心に並べられています。これにも意図があるそうです。

 ▲書棚にはカタログ類が整然と並んでいます。

 デスクワークで長時間座りっぱなしだと健康に良くないため、カタログを閲覧する際に、あえてイスから立ち上がらなければならないようにしています。このような立った姿勢で仕事ができるデスク、いわゆる「スタンディングデスク」は生産性向上や健康効果が期待できるとして、近年、採り入れる企業が増えています。

 ▲エントランスには「We wish you a pleasant flight!」(楽しいフライトを!)のメッセージが書かれていました。

 一通りショールームとオフィスを見学したところで、同社の代表取締役 今枝茂樹(いまえだしげき)さんにお話しを伺いました。どのような経緯で、この「エアライン」をコンセプトにしたオフィスを実現したのか、オフィス空間デザインのメリットはどのようなことがあるのか、などについて聞きました。

■”オフィスっぽくないオフィス”づくりを得意とする空間デザイン会社

 ▲Imaeda Design 代表取締役 今枝 茂樹氏

——よろしくお願いします。このオフィスのコンセプトは今枝社長が考案されたのでしょうか?

今枝さん「このオフィスは、スタッフ全員でコンセプトを考えました。そもそも、私達の仕事って何だろう?という点をみんなで考えた結果、空間デザインと航空会社のコンセプトやサービスが似ていることに気がつきました。お客様のご要望に沿いながら、無限のパターンがあるイメージやデザインを現実の形にする。このフローは、広大な空(イメージ・デザイン)の中でパイロットやアテンダント(デザイナー・設計士)が、お客様を目的地に連れて行く流れと近いものです。そのため、ショールーム型オフィスのコンセプトを「エアライン(旅客機)」としました。」

——空港や機内を忠実に再現されていますね。

今枝さん「細かい部分まで凝っていますよ。たとえば、実際にお客様が訪問されたら、チェックインカウンターで搭乗券をお渡しします。そして滑走路を歩いて機内をモチーフとするラウンジにお通しします。打ち合わせは5ヶ所の打ち合わせエリアのいずれかで行います。どれも各国のインテリア・デザインをベースとしており、ちょっとした海外旅行気分が味わえます。」

——お客様が訪問された際は驚くのではないでしょうか。お客様はどのような反応をされますか?

今枝さん「すでにたくさんのお客様が訪れていますが、お客様もワクワクしている様子が伝わります。空き時間にオフィス内を散策する方もいらっしゃいます。また、『こんな雰囲気がいい』とデザインの参考にもしていただいています。」

 ▲打ち合わせ場所が記載されている搭乗券。裏面には次回の打ち合わせに関する内容も記載されている。

——スタッフの感想はいかがですか?

今枝さん「このオフィスは、スタッフ全員に、『どういう時にモチベーションが上がるのか』、『どうすれば生産性が上がるのか』といった内容の無記名のアンケートをとり、分析・検討して設計しました。スタッフからは『おしゃれで働きやすい』、『トイレも居心地がいい』、『会社のブランドイメージが上がった』などの感想があります。スタッフのモチベーション向上やコミュニケーションの活性化などの効果を感じています。」

——「こんなオフィスで働いてみたい!」という学生さんも多いのでは?

今枝さん「今年初めて学生向けの合同企業説明会にブース出展したのですが、学生さんからの評判も上々でした。実際にオフィス訪問してくれた方も多く、『リラックスして面接を受けられました』とか『素の自分で話せました』との声をもらえました。会議室で受ける面接は緊張すると思うのですが、このオフィスの雰囲気だから、落ち着いて話せたのだと思います。」

——昨今は人材確保で悩んでいる企業も多いですが、オフィスデザインは採用にも影響するということですね。

今枝さん「オフィスとはいわば、“企業の顔”です。たとえば、ブランディングのポイントとして、企業理念や企業のコンセプトをオフィスに採り入れる方法があります。顔となる部分を視覚的に見せ、『良い企業で働いている』とか『ここでずっと働きたい』と社員に思ってもらうことが大切です。社員の満足度が高まれば、モチベーション向上に伴う離職率の低下も期待できますし、ブランディング強化にも繋がります。
 経済産業省も2007年から、『組織の創造性を最大限に発揮するための働き方に適した”場(オフィス)”』を『クリエイティブオフィス』として、そのようなオフィスづくりを推進しています。『クリエイティブオフィス』は、個性的かつ快適なオフィス環境を整えることで、スタッフの創造性を育み、コミュニケーションの活性化やモチベーション維持・向上を狙うことができます。結果的に生産性が高まり、収益向上にも繋がるといわれています。」

——オフィスのデザインは企業にとって重要なんですね。御社にはどのようなオフィス空間デザインの依頼が多いですか?

今枝さん「カフェやバーのように、居心地のよいワクワクするような空間、いわば”オフィスっぽくないオフィス”の実現を得意としています。近年はそのようなオフィスにしたいという依頼が増えています。」

——ところで、御社は現場にVRを導入していると伺っています。具体的にどのような使い方をしているのでしょうか?

 ▲VRのイメージ

今枝さん「オフィスデザイン業界的には、3Dの図面で完成イメージを見せることは一般的ですが、VRを現場に導入している会社はまだ少ないのではないでしょうか。VRによって、内装が出来上がる前の空間を自分でバーチャル体験して、広がりや距離感などを確認することができます。VRなら完成形をよりイメージしてもらいやすいため、導入しました。」

——なるほど。最後に、今後の展望を教えてください。

今枝さん「現在はオフィス、店舗、住宅の空間デザインを手掛けていますが、その領域を広げていきたいです。例えば病院やクリニックの待合室をリラックスできる空間にできればと考えています。また、海外も意識しています。日本の人口が減っている中、質の高い空間デザインを海外に発信していきたいです。」

——ありがとうございました。

今、働き方改革の影響でオフィス空間デザインに意識を向ける企業が増えています。今枝さんがお話されたように、オフィスは企業の顔といえます。良質なオフィス環境は、お客様に与える印象を良くし、お客様との打ち合わせの質を高め、またスタッフの仕事を効率化し、コミュニケーションを良くし、採用力を高めることにもつながります。ひいては会社の業績にもよい影響を与えます。仕事の効率化や人材採用に悩んでいる企業の方は、オフィス環境に目を向けてみてはいかがでしょうか。