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若手が活躍する会社のエンゲージメントを高める取り組み(コプロ・エンジニアード)

今、日本企業の多くは人材不足が成長の足かせとなっており、少子化の影響で特に若手社員が不足しています。そして、国内企業の新卒内定辞退率は6割(※1)を超え、国内企業の社員の3年目離職率は3割(※2)を超えていることが、企業の経営者や人事担当者の頭を悩ませています。そこで、内定辞退や早期離職を防ぐために、いかに内定者や社員の「エンゲージメント」(社員の会社に対する愛着感や、会社の一体感)を高めるかが、共通の課題となっています。

そのような中、若手社員の活躍によって成長を遂げている会社があります。建設エンジニア専門の人材派遣を手掛ける、名古屋市に本社を構える株式会社コプロ・エンジニアード(以下「同社」)です。全国に13の支店を構え、創業13年目となる今年度は100億円以上の売上達成を見込んでいます。同社では、様々な取り組みによって、社員のエンゲージメントを高めており、それが若手社員の活躍に繋がっているようです。

その取り組みの1つが「コプロアワード」という、全国の拠点から全役員・営業社員・事務社員の全員が一同に会して行われる表彰式です。企業が表彰式を開催すること自体は珍しくありませんが、同社では社員がこのアワードにかける「熱量」が他社とは違います。ほとんどの社員が、いずれかの受賞を目指して日々の仕事に打ち込んでおり、アワードの結果発表に涙する社員も少なくありません。

そこで本記事では、2018年10月12日にヒルトン名古屋で開催された第24回コプロアワードの様子を中心に、同社の社員のエンゲージメントを高める取り組みをご紹介します。

 

■表彰式と同時に行われた「内定式」

第24回コプロアワードに先立ち、2019年度入社内定式が開催されました。内定式と表彰式を同日に行う会社は珍しいですが、2つのイベントを同時開催する理由は後述します。

社員が拍手で迎える中、営業・事務の内定者が緊張の面持ちで入場しました。

先輩社員が見守る前で、内定者が着席しました。

代表取締役社長の清川甲介氏がタキシードに蝶ネクタイの姿で登場し、内定者の代表に内定証明書を授与しました。

その後、社員が作成したウェルカム・ムービーを放映して内定式は終了しました。内定者は、そのまま同会場で開催されるコプロアワードに参加します。

 

■会場が熱気に包まれる表彰式「コプロアワード」

会場設営の後、第24回・コプロアワードが幕を開けました。全国13の支店から200名弱の社員が一堂に会し、個人と支店のMVPをはじめとする、個人16部門、支店2部門が表彰されます。

冒頭に、社員が制作・出演したユニークなオリジナルムービーが放映されて会場を盛り上げました。和気あいあいとした懇親タイムを経て、いよいよ表彰式の時間。会場は高揚感と緊張感が高まり、全社員がワクワクとした表情で発表を待ち望んでいます。

全部門の受賞者一人ひとりにスポットを当てて表彰し、受賞者一人ひとりがスピーチをするため、コプロアワードは2時間にも及びます。初めての受賞で歓声を上げる今年の新入社員や、部下の受賞を受けて涙を流す上司。複数の部門を受賞し、何度もステージ上で表彰された社員もいました。

とりわけ会場が盛り上がったのは、新人王・個人MVP・支店MVPの3部門の表彰です。

新人王の男性には表彰に加え、サプライズで母親からの手紙があり、社長が代読しました。そして両親と利用できるレストランの食事券がプレゼントされました。両親に感謝を伝えてほしいという、粋な計らいです。

個人MVPの男性には副賞としてオーダースーツがプレゼントされました。「人は見た目が9割」とよく言われます。更なる高みを目指してもらいたいとの期待が込められた副賞ではないでしょうか。

支店MVPに輝いたのは、本社お膝元の名古屋支店でした。支店長は感激のあまり、涙で声を詰まらせながらのスピーチとなりました。副賞として、支店メンバー全員で利用できる国内リゾート旅行券が送られ、支店のメンバーが歓喜の笑顔に包まれました。

これで表彰式は終わりましたが、最後に全社員へのサプライズが用意されていました。会社が市内の10か所以上の飲食店を予約し、社員たちに交流食事会を提供するというアナウンスです。遠方の社員には名古屋での宿泊付きです。単なる飲み会で終わらないよう、それぞれの会場に課題が出され、社員同士の交流を促進するよう工夫されていました。

コプロアワードはもともと、「甲子園のように、社員たちが輝ける場を設けたい」、「日頃会社のために頑張っている社員に直接感謝を伝えたい」という清川社長の想いから、2012年4月に第1回が開催されました。今回が24回目となります(現在は年に2回開催)。全社員が参加する、その交通費だけを考えても、会社としては相当な負担となっているはずです。同社はそのような負担を厭わず、このアワードを24回も続けているのは、それだけ社員のエンゲージメントを重要視しているからではないでしょうか。

 

■内定者のエンゲージメントを高める取り組み

同社が内定式をコプロアワードと同時開催するのは、それによって次の効果が生まれるからです。
・“社員同士で感謝し合う”という社風を内定者にリアルに伝えられる
・社員の人柄を内定者にリアルに伝えられる(会場で直接会話できる)
・表彰されて輝く先輩社員の姿を目標像(ロールモデル)として描ける
・社員たちが切磋琢磨する姿を見て、自分の入社後のイメージを描きやすい

これらを通して、内定者のエンゲージメントが高まり、内定辞退や早期離職を予防する効果があると考えられます。

同社はまた、内定者専用の広報誌を毎年7月から12月にかけて発行しています。その内容は、同期生となる内定者の紹介や、社内・各支店の職場の雰囲気の紹介、さらに役員や先輩社員のメッセージを伝えるものです。この広報誌は内定者には「会社の様子が分かる」、「入社して働くイメージが沸く」と評判のようです。これも内定者のエンゲージメントを高める効果があると考えられます。

▲内定者専用の広報誌「COPRO MAGAZINE」

 

■社員のエンゲージメントを高めるアプリ

同社はコプロアワード以外にも、社員のエンゲージメントを高める様々な取り組みを行っています。すべてを紹介しきれませんが、先にコプロアワードという、いわば「アナログ」の取り組みを紹介しましたので、ここでは反対の「デジタル」を活用した取り組みについて紹介します。

 

同社は社員同士で「感謝」のメッセージを伝え合うスマートフォンのアプリ「THANKS GIFT」(提供:株式会社Take Action’)を導入しています。同社は「感謝し合う」社風を大切にしています。同じ拠点にいる社員同士はもちろん、全国の拠点にいる社員同士でも感謝のメッセージを伝え合えるようにと、このアプリを導入しました。

伝えたい気持ちに応じて13種類のコインを選び、メッセージとともに伝えたい相手に送ります。(この13種類は、同社の行動指針に重なっており、自然と行動指針に沿った社員の行動を促す効果があります。)

相手に面と向かっては伝えにくい感謝の想いも、このアプリを使えば気軽に伝えることができます。同期、上司と部下の関係も円滑になります。

このアプリは、営業・事務系の社員だけでなく、技術社員も利用しています。技術社員はお客様の建設工事現場で働いているため、営業・事務社員と技術社員とがコミュニケーションを取る機会は限られてしまいます。THANKS GIFTはそれを補い、全社員のコミュニケーションを促進しています。このアプリによって、同社の社員は他の企業の社員と比べて、日々感謝し感謝される回数が断然多くなります。

 

また、同社は2018年4月からオリジナルのスマホアプリ「BEST TEAM」を導入しています。派遣エンジニアを含む社員全員が、より会社のことを理解し、社員のエンゲージメントを高めるために導入されたそうです。

▲BEST TEAM画面

さて、昨今は多くの企業が、若手社員の不足、そして内定辞退や早期離職に悩まされています。そのような中、コプロ・エンジニアードは、コプロアワードをはじめ、「アナログ」から「デジタル」まで様々な取り組みによって、社員のエンゲージメントを高めることに成功しています。これらの取り組みから全国の企業が学べる点は、規模や業種を問わず、多いのではないでしょうか。

 

※1:「リクルートキャリア就職みらい研究所」の「就職プロセス調査 2017年10月1日時点 内定状況」によると、2018年3月卒の大学生・大学院生の内定辞退率は64.6%です。
※2)厚生労働省「新規大卒就職者の事業所規模別就職3年後の離職率の推移」(平成29年9月)によると、平成26年3月卒の3年目離職率は32.2%です。