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東海最前線

クラフト作家の登竜門「クリエーターズマーケット」を主催・運営する有限会社ビータ(名古屋市)

2021.12.06

社会・地域

提供:有限会社ビータ
提供:有限会社ビータ

【ここが最前線】東海地区におけるクラフト文化をけん引、多くのクラフト作家のデビューを後押し

いまや8000億円規模ともいわれるクラフト、ハンドメイド市場。
「メルカリ」、「ミンネ(minne)」や「クリーマ」などのECサイトも普及しました。
コロナ禍の影響はあるものの、クリエイターが出展する
「●●マーケット」「●●マルシェ」「●●クラフト」などのイベントは
拡大傾向にあります。

名古屋市で毎年6月と12月に開催されている「クリエーターズマーケット」は
その草分け的存在。クラフト作家の登竜門として全国から出展者が集まり、
名古屋発、東海地区最大級のつくる人とそれを求める人をつなぐイベントとして、
20数年間の歴史を刻んできました。

コロナウイルスの感染拡大によって一時イベントの休止などが相次ぎましたが、
秋には徐々に復活の兆しを見せ始め、来る12月11日(土)、12日(日)に
「ポートメッセなごや」で「クリエーターズマーケットvol.45」が
1年ぶりに開催されます。

企画・運営する有限会社「ビータ」の代表取締役社長
相羽寿郎(あいば ひさお)さんを訪ね、
「クリエーターズマーケット」(以下、「クリマ」という)が果たしてきた役割と
今後の展開についてお話を伺いました。

「クリマ」のボスこと相羽さん

 

つくる人たちの発表の場でありたい

「クリエーターズマーケット」のHPのトップに記載されているのは、
「クリマはつくる人を応援するものづくりイベント」という文字。
この一言に相羽さんの願いが込められています。
それは20数年間にわたり、作家のオリジナリティを大切にしながら、
ぶれることなく刻まれてきたクリマの歴史と重なります。

相羽さん)「『クリエーターズマーケット』を開催するにあたり、
    うちよりも4、5年前に始まった『東京デザインフェスタ』を
    モデルにしたというのは、ずっと言ってます。
    それまでは屋外でのイベントが多かったんですよね。
    屋外は雨風の心配もあり、天候に左右されます。
    ですから、それを屋内でやりたいと、
    第1回は『名古屋国際会議場』(熱田区)のイベントホールで開催しました。

  しかし、会場準備や後始末のための入退場時間に制限があったため、
  2回目からは港区金城ふ頭にある『名古屋市国際展示場(ポートメッセなごや)』で
  開催することにしました。

  ポートメッセは24時間貸しなので、真夜中でも早朝でも出入りすることができます。
  初回は第3展示館の4分の1を借りての開催で、規模もたいへん小さかったのですが、
  いずれは第3展示場をすべて使って行うという目標を立てていて、
  それを達成したのが11回目か12回目だったと思います。」

その後、出展希望者が大幅に増加したため、第2展示館も借り切っての開催となり、
現在に至ります。

「クリエーターズマーケット」開催を前に入場ゲートに並んで待つ人々 2019年以前の写真より 提供:有限会社ビータ
「クリエーターズマーケット」会場内の様子 2019年以前の写真より 提供:有限会社ビータ

 

 

出展者に大切なのはオリジナリティ スタッフに必要なのはホスピタリティ

相羽さんが出展者に求めているのはオリジナリティ。
「クリエーターズマーケット」に出るには審査があり、出展者は申し込みの際に、
必ず作品写真を提出しなくてはなりません。
他人の商品をコピーしていないか、商品を他から仕入れて販売するのでないか
などのチェックをするためです。東海地方にある多くのクラフト系のイベントも、
「クリエーターズマーケット」のやり方をお手本にしているようです。

一方で「クリエーターズマーケット」開催に際し、
相羽さんがスタッフたちに次のように言っているそうです。

相羽)「ぼくたちの役割は、どうしたら出展者が気持ちよく出展してもらえるか。
    来場者がどうしたら気持ちよく来場してもらえるか。
    それを考えて仕事をするということ。
    最初はみんなもぼくのこと、知らなかったんだけど、そのうちに覚えちゃって、
    今では”クリマのボス”と呼ばれています(笑)」

 

フードコートをテント出店からキッチンカー出店へ

ところでイベントといえば飲食も大切。
人気の高い飲食店が出店すると、その前に長蛇の列ができることも珍しくありません。
近年イベントのフードコートには、キッチンカーでの出店者がたいへん多くなりました。
これをいちはやく取り入れたのも、実は「クリマ」なのです。

相羽)「キッチンカーには流しや排水設備、また自家発電装置がすべて
    備わっているため、主催者側がそれらを準備する必要がありません。
    主催者はお客様のために食事用のテーブルや椅子、
    ゴミ処理の準備などを整えるだけで済むのでとても楽なんです。」

「クリマ」はイベントにおけるフードコートを、それまで当たり前だったテント出店から
キッチンカーでの出店に変革したのでした。
今ではキッチンカーの組合の顧問までしているという相羽さん。

相羽)「キッチンカーの人たちにとっても『クリマ』が登竜門のようになっています。」

 

「クリマ」のボスはプロのアーティストやクリエーターを育てる

相羽)「『クリマ』を卒業して、アーティストやクリエーター1本で食べていくプロを
    育てるのもぼくらの役目かと思う。」

相羽さんは時間があれば目を肥やすために、
さまざまな美術展や個展などを見に行きます。
自分では絵も描かないし、ものも創らない。ただ見るのが好きなのだそうですが、
これまで20人以上のプロの作家を育ててきました。

相羽)「『クリマ』に出る人のほとんどは、生活のために会社勤めなどをしています。
    それでは作品作りの時間がなかなか取れませんよね。
    でも、その中で寝る間も惜しんで作品を創る努力をして、
    才能を開花させていく人がいる。
    そういう人には『おまえ、サラリーマンを辞めろ』って言っちゃいますね。
    ぼくのせいにしていいからって(笑)。

    だけど、ぼくが認めた人でできなかった人はいません。
    中には海外で展示会をしたり、東京や大阪の百貨店の美術サロンで
    個展をしたりする人が多いですね。」

プロの作家を目指す人たちにとって、「クリマ」のボスはとても頼もしい存在なのです。

 

「クリマ」でライブペイントをするアーティスト 提供:有限会社ビータ
「クリマ」出展者の作品は多種多様。その中からキラリと光るものを見つけるのが楽しみ
提供:有限会社ビータ

 

 

長年培ったイベントのノウハウを生かして「クリマ」をスタート

ところで、相羽さんはなぜ、「クリマ」を始めたのでしょうか? 
当初はファッション店のバイヤーなどの仕事をしていたという相羽さん。
その後、商品の企画や販売促進などを任されるようになり、
やがてイベントの企画・制作、セールスプロモーションなども
手掛けるようになりました。

その後、次第に人を頼らず自分でやろうという気持ちが強くなり、
当時、台湾や中国、韓国などで人気のあったブリキやソフビ(ソフト塩化ビニール)の
おもちゃなどを扱う「モダン文化マーケット」という、
なつかしのおもちゃの展示イベントを開催することとなったのです。
人気のテレビ番組「開運!なんでも鑑定団」に出演していた
世界的に有名な玩具コレクターである北原照久さんにも協力していただきました。

その後、相羽さんはそれまで培ったノウハウを生かし、
クリエーターの卵たちの作品発表の場として「クリマ」を開催するようになったのです。

提供:有限会社ビータ

 

 

東海地区最大級のクラフトイベントに成長

今では東海地区最大級のクラフト系イベントに成長した「クリマ」には、
全国から約3000人ものクリエーターが出展します。
初期のころは雑誌や新聞などの紙媒体を中心に莫大な広告宣伝費がかかりましたが、
回を重ねるごとに知名度も上がり、
最近では素材をいくつか用意してSNSや口コミを中心にPRしています。
来場者のために、ワークショップやキッズスペースなどのコーナーも
設けられるようになりました。

相羽)「『クリマ』を始めた当時はスマホやパソコン、
    ネット環境も今ほど整ってはおらず、出展者の申し込みもファックスでした。
    でも、今はHPから申し込みを受け付けて処理しています。
    出展者の間では名古屋の『クリマ』はよく売れると言われています。
    そうすると人気のあるクリエーターが出展してくれる。
    彼らはお客さんを連れてきてくれます。
    そうすると評判が評判を呼んで、来場者も増えます。」

これまでに北海道からキャンピングカーを8台ぐらい連ねて出展した作家たちもいたそう。
12月の「クリマ」には沖縄の読谷村(よみたんそん)の役場が出展。
地元の工芸品を展示販売・PRするそうです。

相羽)「そんなふうに来てもらえれば、こちらもめちゃ嬉しいし、
    やりがいのあるイベントになっていますね。」

提供:有限会社ビータ
提供:有限会社ビータ

 

 

「クリマ」は本物を五感で確かめる貴重な場所

コロナウイルス感染拡大のため、去年は休止。今年は6月も開催しました。

相羽)「いつも2100ブースぐらい出るんだけど、
    今年の6月はコロナウイルス感染拡大防止のために
    通路を広げなきゃいけないので、ブースの数を300ほど減らしました。」

コロナ禍において、非接触型で物を売り買いできるハンドメイド系、
クラフト系のECサイトが数多く存在するなか、
これだけリアルでの対面販売を望む人がいて、
対面での販売がしたい作家がいるということは、どうしてでしょうか?

相羽)「イベントは作家にとって作った物を多くの人に見てもらえるチャンスであり、
    それが欲しい人にとっては作家と直接コミュニケーションを図ることで、
    楽しく買い物ができる機会でもあります。
    これだけ情報があふれている時代において、
    クラフト系のイベントは本物を五感で確かめる事のできる
    貴重な場所なのでしょう。」

コロナが収束したら、「クリマ」の海外進出を考えているという相羽さん。
次のように夢を語ってくれました。

相羽)「日本のアート文化に注目している台湾や香港、東南アジアなどで行われている
    同様のイベントとコラボしたいです。
    これまでにはニューヨークやパリ、東京などで
    『クリマ』の人気上位作品の展示即売をしました。
    新たな作家の掘り起こしをしてみたいと思いますね。」

提供:有限会社ビータ

 

【会社概要】
有限会社ビータ
オープン日:1989年
資本金:300万円
事業内容:イベント・セールスプロモーション企画,制作,運営,主催
代表者:代表取締役社長 相羽寿郎
所在地:〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄3-25-39サカエサウススクエア 3C
TEL:052-253-6601
FAX:052-253-6715
URL:https://www.creatorsmarket.com/E-mail:info@creatorsmarket .com 

 

【取材・文・撮影】
松島 頼子
岐阜県出身。岐阜県を拠点に約20年、地域の活性化から企業家インタビューまで
ライターとして幅広く活動。実家はお寺。地域の歴史や文化、伝説などを深掘り
することで、まちの活性化や地域を見直すことにつなげたい。
「里山企画菜の花舎」 代表
里山企画菜の花舎  https://satoyamakikakunanohanasha2020.jimdofree.com/